貸金請求事件における被告の訴訟代理人の和解の権限には、和解の一条項として、当該貸金債権の担保のため被告所有の不動産について原告に対し抵当権設定契約をなす権限も包含されるものと解するのが相当である。
訴訟代理人の和解の権限の範囲。
民訴法81条2項
判旨
訴訟代理人に対する和解権限の授与がなされた場合、その権限には訴訟物に関する互譲の一方法としてなされる担保権の設定等の付随的な合意をなす権限も包含される。
問題の所在(論点)
訴訟代理人に対して授与された和解の代理権(民訴法55条2項1号)の範囲に、訴訟物の直接的な処分にとどまらず、その履行を担保するための抵当権設定等の付随的合意が含まれるか。
規範
訴訟代理人が民事訴訟法上の和解の特別授権(現行法55条2項1号相当)を受けている場合、その代理権の範囲には、訴訟の目的となっている権利関係を解決するための「互譲の一方法」として、合理的かつ密接に関連する附随的合意(担保の提供等)をなす権限も包含されると解するのが相当である。
重要事実
上告人は、前事件(金銭債権請求事件)において訴訟代理人弁護士に対し、和解の代理権を授与し、その旨を記載した委任状を提出していた。その後、当該弁護士は、前事件の相手方との間で、支払期日の延期および分割払いの合意をする代わりに、その担保として上告人所有の不動産に抵当権を設定する旨の契約を締結した。上告人は、当該抵当権設定契約は授権された和解権限の範囲外であること、および和解権限の授権を撤回したことを理由にその効力を争った。
あてはめ
前事件は金銭債権に関する紛争であり、合意された抵当権の設定は、弁済期日の延期や分割払いを認める代わりに、その債務の履行を確実にするための「訴訟物に関する互譲の一方法」としてなされたものである。このような事実関係の下では、和解に向けた相互譲歩の一環として実質的関連性を有しており、授与された和解の代理権限のうちに、当該抵当権設定契約をなす権限も包含されていたと解される。また、授権の撤回についても、裁判所や相手方に対して明示的に通知された事実は認められず、依然として適法な代理権が存在していたといえる。
結論
訴訟代理人による抵当権設定契約は、授与された和解権限の範囲内として有効であり、上告人はその効力を否定できない。
実務上の射程
訴訟上の和解における代理権の範囲を弾力的に解釈し、互譲の一環としてなされる付随的処分についても広く代理権の効力を認める実務上の指針となる。答案上は、特別授権の範囲を検討する際の解釈基準として、本件のような「互譲の一方法」といえるかという視点を用いるべきである。
事件番号: 昭和33(オ)433 / 裁判年月日: 昭和35年7月5日 / 結論: 棄却
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【結論(判旨の要点)】即決和解の条項が一方当事者に著しく有利であっても、賃貸借解除後の経緯や返り証の不存在等の諸事情を勘案し、通謀虚偽表示等の瑕疵が認められない限り、当該和解は有効である。 第1 事案の概要:上告人A1と被上告人との間で即決和解が成立したが、その条項は被上告人にとって著しく有利な内容であった。この和解は…
事件番号: 昭和48(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和50年6月27日 / 結論: 棄却
訴訟事件について和解の権限を有する訴訟代理人は、右事件が調停に付された場合、当該調停についても当然に代理権を有する。