判旨
当事者が訴訟代理人の選定および訴訟代理権授与行為をなす代理権を第三者に与えることは原則として自由であり、その受任者は特段の事情のない限り弁護士であることを要しない。また、訴訟行為の代理行為(訴訟委任行為)そのものがすべて弁護士でなければなし得ないものと解すべき規定は存在しない。
問題の所在(論点)
訴訟代理人を選任するための代理権を第三者に授与する行為(訴訟委任の代理権授与)について、受任者が弁護士であることを要するか。また、弁護士でない者が訴訟代理人を選定・選任する行為は、弁護士代理の原則に反し無効となるか。
規範
1. 旧民訴法79条1項本文(現54条1項参照)の「弁護士代理の原則」は、裁判上の行為を行う代理人そのものの資格を制限するものであり、訴訟代理人を選任する権限(訴訟委任の代理権)を授与する行為までを弁護士に限定するものではない。 2. したがって、当事者が第三者に対して訴訟代理人を選定・選任する代理権を授与することは原則として自由であり、その受任者は特段の事情のない限り弁護士であることを要しない(民法102条参照)。
重要事実
上告人A1は、A2に対し、本件訴訟における訴訟代理人(弁護士)を選定し選任する代理権を授与した。これに基づき、A2は市川弁護士をA1の訴訟代理人として選任した。これに対し、上告人側は、訴訟代理権を授与する行為(訴訟委任行為)は訴訟行為であり、弁護士法および民訴法の趣旨に照らし、弁護士以外の者がこれを行うことは許されないと主張して、市川弁護士による訴訟代理の適法性を争った。
あてはめ
1. 訴訟行為の代理行為(訴訟委任)が訴訟行為の性質を有することは否定されないが、訴訟行為に関連するすべての行為が訴訟代理人(弁護士)によってなされなければならないという規定は存在しない。 2. 本人(A1)が訴訟能力者である限り、代理人選定の判断を第三者(A2)に委ねることは私的自治の範囲内である。 3. A2はA1から授与された代理権に基づき弁護士を選任しており、最終的に裁判上の行為を行うのは資格を有する弁護士である。したがって、代理人の選定プロセスに非弁護士が介在したとしても、弁護士代理の原則が守られている以上、何ら違法ではない。
結論
弁護士でない者が、当事者からの委任に基づき訴訟代理人(弁護士)を選定・選任する行為は適法かつ有効である。受任者は必ずしも弁護士であることを要しない。
実務上の射程
弁護士代理の原則(民訴法54条1項)の限界を画する判例である。訴訟委任の事務(弁護士の選定・契約締結)を非弁護士(親族や会社担当者等)に代行させることの有効性を肯定する根拠として活用できる。ただし、反復継続して報酬を得る目的で行われる場合は、弁護士法72条(非弁活動の禁止)に抵触する可能性があるため、答案上はその点に留意が必要である。
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