判旨
弁護士法25条1号等に抵触し訴訟法上無効とされる裁判上の和解であっても、後に当事者間で別途私法上の合意が成立すれば、その合意に基づき和解内容と同様の私法上の権利義務関係を発生させることができる。
問題の所在(論点)
弁護士法違反等により訴訟法上無効とされ、執行力を否定された裁判上の和解の内容について、事後的に私法上の契約によってその効力を認めることができるか。
規範
裁判上の和解が、双方代理の禁止(民法108条)や弁護士法25条1号(職務を行い得ない事件)に違反し、訴訟法上の効力や執行力を否定される場合であっても、その後に改めてなされた私法上の和解契約としての追認や合意は、特段の事情がない限り、私法上の効果として有効に成立する。
重要事実
上告人A2と被上告人Bとの間でなされた裁判上の和解について、担当弁護士Dが弁護士法25条1号に違反して双方の代理をしていた。このため、先行する請求異議事件の確定判決により、当該和解調書に基づく強制執行は許されない(執行力がない)と判断されていた。しかし、その後、A2とBとの間で当該和解の内容を当初から有効なものとする旨の私法上の契約が成立したとして、Bがその履行を求めて提訴した。
あてはめ
本件では、和解調書自体の訴訟法上の効力や執行力が否定された後、当事者間に私法上の契約によって本件和解を当初から有効のものとする合意が成立したと認められる。この合意は、執行力を争った先行判決と抵触するものではなく、裁判上の和解そのものの追認というよりは、別途成立した私法上の和解契約としての効力を主張するものである。したがって、民法108条や弁護士法違反を理由に裁判上の和解が無効であったとしても、事後の私法上の合意により、その内容に基づく権利義務を発生させることを妨げない。
結論
私法上の和解契約の成立が認められる以上、訴訟法上の無効にかかわらず、当該合意に基づく請求は認められる。
事件番号: 昭和27(オ)813 / 裁判年月日: 昭和30年12月16日 / 結論: 棄却
一 甲乙間に成立した和解契約の履行確保のため、甲が乙の委託により乙の代理人として選任した弁護士丙の裁判上の和解の申立に基き、甲乙間に右和解契約どおりの内容の和解調書が作成されたところ、その後乙が丙に対する代理権授与の真実を争い甲に対し右和解の無効確認の訴訟を提起した場合において、丙が甲の代理人としてこれに応訴し訴訟を迫…
実務上の射程
裁判上の和解が訴訟手続上の瑕疵(無権代理・双方代理・弁護士法違反等)により執行力を失った場合でも、実体法上の合意としての有効性を構成することで、和解内容の実現を図る際の理論的根拠となる。
事件番号: 昭和31(オ)875 / 裁判年月日: 昭和33年11月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】即決和解の条項が一方当事者に著しく有利であっても、賃貸借解除後の経緯や返り証の不存在等の諸事情を勘案し、通謀虚偽表示等の瑕疵が認められない限り、当該和解は有効である。 第1 事案の概要:上告人A1と被上告人との間で即決和解が成立したが、その条項は被上告人にとって著しく有利な内容であった。この和解は…
事件番号: 昭和27(オ)414 / 裁判年月日: 昭和28年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約が存在する場合、その家屋が敷地上に現実にいかなる方法で建築されているかは、特段の事情がない限り、借地法の適用の有無に影響しない。 第1 事案の概要:上告人と被上告人の間には、本件家屋の敷地について賃貸借契約が存在すること自体に争いはなかった。しかし、その敷地上…
事件番号: 昭和33(オ)433 / 裁判年月日: 昭和35年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】あらかじめ内容が確定している和解手続において、一方当事者が相手方の代理人に対して和解手続のための代理権を授与することは、民法108条が禁止する双方代理の法意に反せず、有効である。 第1 事案の概要:上告人は、相手方である被上告人との間で和解条項をあらかじめ了承していた。その上で、既に内容が取り決め…