判旨
証拠調べの限度は裁判所の自由裁量に委ねられており、申請された証拠が唯一の証拠方法でない限り、その尋問申請を却下しても違法ではない。
問題の所在(論点)
当事者が申請した証人尋問を裁判所が却下することが、民事訴訟法上の審理不尽等の違法を構成するか。特に、証拠調べに関する裁判所の裁量の範囲が問題となる。
規範
証拠調べを行うか否かの判断(証拠調べの限度)は、裁判所の自由裁量に委ねられる。したがって、当事者が申請した証拠が、当該事実を証明するための「唯一の証拠方法」でない場合には、裁判所がその申請を却下したとしても、審理不尽や理由齟齬等の違法とはならない。
重要事実
上告人は、原審において証人Dの尋問を申請したが、原審はこの申請を却下した。これに対し、上告人は、当該証人尋問申請の却下が審理不尽および理由齟齬の違法にあたると主張して上告した。なお、本件において当該証人尋問が上告人の唯一の証拠方法であったか否かが争点となった。
あてはめ
本件において、上告人が申請した証人Dの尋問は、上告人の主張を裏付けるための唯一の証拠方法ではなかった。裁判所には証拠調べの範囲を決定する自由裁量が認められており、唯一の証拠方法でない以上、裁判所が必要性を否定して却下することは、裁量の範囲内の適法な措置であると評価される。したがって、原審の措置に審理不尽等の違法は認められない。
結論
証人尋問の申請を却下した原審の措置は適法であり、上告を棄却する。
実務上の射程
民事訴訟法における「唯一の証拠」の法理を確認した事例。実務上、立証責任を負う当事者が他に証拠を持っていない場合にのみ、証拠調べ申請の却下が違法となり得るが、本判決はその反対解釈として、代替手段がある場合の裁判所の広範な裁量を認めている。
事件番号: 昭和36(オ)255 / 裁判年月日: 昭和38年12月17日 / 結論: 破棄差戻
証人の証言を措信しない理由として他の証拠を掲げた場合に、その証拠が、むしろ右証言内容に沿うものであるときは、右判決理由説示には理由齟齬の違法がある。