判旨
役員選任決議の無効および役員の地位不存在の確認を求める訴えにおいて、対象となる役員が既に退任し、その後の役員でないことが明白である場合には、確認の利益を欠く。
問題の所在(論点)
役員選任決議の無効確認および役員の地位不存在確認の訴えにおいて、当該役員が既に退任している場合、確認の利益(民事訴訟法上の訴えの利益)が認められるか。
規範
確認の訴えが適法であるためには、原告の法的地位に現存する不安・危険が存在し、かつ、その解決のために当該確認判決を得ることが有効かつ適切であるという「確認の利益」を要する。過去の法律関係や事実関係の確認は、原則として現在の法的地位に直接影響しないため、特段の事情がない限り確認の利益は否定される。
重要事実
上告人は、被上告会議所が昭和25年6月28日の議員総会で行った役員選任決議が無効であること、および特定の個人が副会頭の地位にないことの確認を求めた。しかし、当該決議で選任された役員らは、昭和27年6月27日までに辞任または任期満了によって全員退任していた。
あてはめ
本件において、上告人が確認を求めている役員は、訴訟の進行中に辞任または任期満了により退任しており、その後は役員の地位にないことが定款の規定等に照らしても明白である。既に役員としての地位を失っている以上、過去の選任決議の有効性や過去の地位の有無を争うことは、現在の紛争を解決するために有効適切な手段とはいえない。したがって、本件訴えを維持する正当な利益は失われていると判断される。
結論
確認を求める役員が既に退任している以上、確認の利益を欠くため、本訴請求は不適法として却下される。
実務上の射程
事件番号: 昭和33(オ)709 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役等を選任した株主総会決議の無効確認の訴えにおいて、当該取締役が既に退任し後任者の登記も完了している場合、過去の法律行為の効力を争う前提としての確認利益は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和29年10月の株主総会においてDおよびEを取締役・代表取締役に選任した決議の無効確認を求めた…
過去の法律関係の確認を求める訴えに関するリーディングケース。答案上では、確認の訴えの適格性を論じる際、対象が「現在の法的地位」であるか、あるいは過去の法律関係であっても現在の紛争解決に直結するかを検討する材料として用いる。本判決のような役員解任や地位確認の事案では、任期満了による失当を検討する際の標準的な判断基準となる。
事件番号: 昭和30(オ)198 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 棄却
漁業協同組合の総会で理事に選挙されその後辞任した者につき、過去において理事でなかつたことの確認を求める趣旨の理事選挙無効確認の訴は、確認の訴として許されない。
事件番号: 昭和26(オ)104 / 裁判年月日: 昭和29年1月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】地方議会議員の除名議決無効確認の訴えは、議員の資格を有することの確認を求めるものである。そのため、除名議決時の議員が全員その資格を失った場合には、もはや訴えの利益が認められない。 第1 事案の概要:上告人は町議会議員の除名議決の無効確認を求めて出訴した。しかし、当該訴訟の継続中に、本件除名の議決当…
事件番号: 昭和34(オ)497 / 裁判年月日: 昭和35年5月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】村議会議長の選挙における決定無効確認の訴えについて、議員の任期満了により議員たる資格を喪失した場合には、もはや当該訴えを維持する訴えの利益が失われる。 第1 事案の概要:上告人は、昭和31年3月17日に施行された被上告村議会の議長選挙において、Dを当選者と定めた議会の決定を不服とし、異議を却下する…
事件番号: 昭和51(オ)116 / 裁判年月日: 昭和51年12月21日 / 結論: 棄却
建設協会に対する除名決議無効確認訴訟の係属中に、被除名者である上告人が破産宣告を受けて建設業者でなくなつたときは、訴の利益を欠くものである。