株式会社の一部株主の代理人による決議権の行使が定款に違反したこと、他の一部株主に対する株主総会招集通知が欠缺したことの違法があつても、その違法が株主総会決議の結果に異動をおよぼすと認められないときは、右決議取消の請求を棄却することができる。
株主総会決議取消の訴において請求を棄却した事例
商法247条,商法251条(昭和25年法律167号による削除前)
判旨
株主総会決議の招集手続または決議方法に法令・定款違反がある場合でも、その違反が決議の結果に影響を及ぼさないことが明らかであるときは、裁判所は決議取消しの請求を棄却することができる。
問題の所在(論点)
株主総会の招集通知漏れや代理権の資格制限違反などの手続的違法がある場合において、当該違法が決議の結果に影響しないことが明らかなとき、裁判所は決議取消請求を棄却できるか。
規範
株主総会決議の取消事由(会社法831条1項各号)に該当する事実が認められる場合であっても、当該違反の事実が決議の結果に影響を及ぼさないことが明らかであると認められるときは、裁判所の裁量により請求を棄却することができる(裁量棄却)。
重要事実
被上告会社の株主総会において、(1)定款で「代理人は株主に限る」と定められていたが非株主が代理人として2000株の議決権を行使した点、および(2)4000株を有する株主Kに対し招集通知を発していなかった点に違法があった。当時の発行済株式総数は80万株であり、本件決議は全株一致(出席・委任状計約55万株)で可決されていた。また、本件決議はあらかじめ株主委員会で推せんされた取締役を選任するための形式的なものであり、議事は支障なく進行していた。
あてはめ
(1)非株主による議決権行使(2000株)については、他の大多数の議決権行使に影響を与えた事実はなく、決議結果に異動を及ぼす事情とは認められない。(2)株主K(4000株)への招集通知欠缺については、仮に通知がなされKが出席していたとしても、賛成多数の状況(約55万株)に鑑みれば決議の結果を左右し得たとは到底認められない。さらに、決議は既定方針通りの形式的なものであり、非株主の出席が決議内容を誘導した事実もない。したがって、いずれの違法も決議の結果に影響を及ぼさないことが明らかであると解される。
結論
本件株主総会決議には法令・定款違反が認められるものの、決議の結果に影響を及ぼさないことが明らかであるため、取消請求を棄却した原審の判断は正当である。
実務上の射程
会社法831条2項(裁量棄却)の解釈指針として重要。答案では、まず手続的違法を認定した上で、違反の程度(株数割合など)と決議結果への影響の有無を具体的に検討し、本法理を適用して結論を導く。
事件番号: 昭和28(オ)1430 / 裁判年月日: 昭和30年10月20日 / 結論: 棄却
一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。 二 株主総会決議取消の訴において、当該決議に取消の原因となるべき違法の点があ…
事件番号: 昭和29(オ)643 / 裁判年月日: 昭和31年11月15日 / 結論: 棄却
一 昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二五一条が削除された後は、裁判所に右削除前と同様な裁量権があると解すべきではない。 二 予め株主総会決議事項の通知をしなかつたというような軽微でない手続上の瑕疵があるときは、裁判所は右決議取消の請求を認容すべきである。
事件番号: 平成27(受)1431 / 裁判年月日: 平成28年3月4日 / 結論: 棄却
ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法である。 (補足意見がある。)