ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは不適法である。 (補足意見がある。)
ある議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えの適否
会社法831条
判旨
議案を否決する株主総会等の決議の取消しを請求する訴えは、会社法上の訴えとして不適法である。
問題の所在(論点)
議案を否決する株主総会決議について、会社法831条1項1号に基づく取消しの訴えを提起することができるか。
規範
会社法が株主総会決議の取消しの訴え(同法831条)を認め、出訴期間や判決の対世効等の特別な規定(同法834条から839条)を置いた趣旨は、瑕疵ある決議によって新たな法律関係が生ずることを前提に、その法律関係の早期安定を図る点にある。したがって、決議の取消しによって「新たな法律関係が生ずる」といえない場合には、同法に基づく決議取消しの訴えを提起することはできない。
重要事実
1. 被上告人(会社)の臨時株主総会において、株主である上告人らを取締役から解任する旨の議案が提出されたが、否決された(本件否決決議)。 2. 上告人らは、本件否決決議に取消事由があるとして、会社法831条1項1号に基づき、その取消しを求めて提訴した。 3. 上告人らは、本件否決決議が取り消されれば、別途提起されている役員解任の訴え(会社法854条)が不適法となり却下されるという法的利益があると主張した。
事件番号: 昭和41(オ)868 / 裁判年月日: 昭和42年3月14日 / 結論: 棄却
株主である取締役は、当該取締役の解任に関する株主総会の決議については、商法第二三九条第五項にいう特別の利害関係を有する者にあたらない。
あてはめ
一般に、ある議案を否決する決議がなされても、それは議案が成立しなかったという現状維持の結果をもたらすにすぎず、当該決議によって「新たな法律関係が生ずる」ことはない。また、仮に否決決議を取り消したとしても、それによって直ちに議案が可決されたものとみなされるわけではなく、やはり新たな法律関係を形成することにはならない。本件のように役員の解任議案が否決された場合であっても、役員としての地位に変動は生じないため、同様に解すべきである。したがって、否決決議は会社法が想定する取消しの訴えの対象には含まれないといえる。
結論
ある議案を否決する株主総会決議の取消しを求める訴えは、会社法が想定していない不適法な訴えであり、却下されるべきである。
実務上の射程
役員解任議案に限らず、全ての否決決議について取消しの訴えの対象外とする一般的規範を示した。再提案の制限(会社法304条但書)等についても、判決文(補足意見)によれば、決議の取消しではなく実体法上の解釈により対応すべきとされる。
事件番号: 昭和28(オ)1430 / 裁判年月日: 昭和30年10月20日 / 結論: 棄却
一 商法旧第二〇六条(昭和二五年法律第一六七号による改正前のもの)の施行当時、記名株式の譲渡があつたにかかわらず株主名簿の名義書換が会社の都合でおくれていても、会社が右譲渡を認め譲受人を株主として取り扱うことは妨げないと解するのが相当である。 二 株主総会決議取消の訴において、当該決議に取消の原因となるべき違法の点があ…
事件番号: 昭和34(オ)250 / 裁判年月日: 昭和36年11月24日 / 結論: 棄却
一 訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合でも、その第三者は、当該訴訟の当事者となりうる適格を有しないかぎり、民訴第七五条の規定により、共同訴訟人として当該訴訟に参加することができない。 二 株主総会決議取消訴訟において被告となりうる者は、当該株式会社に限られる。
事件番号: 昭和35(オ)1120 / 裁判年月日: 昭和37年8月30日 / 結論: 棄却
株式会社の一部株主の代理人による決議権の行使が定款に違反したこと、他の一部株主に対する株主総会招集通知が欠缺したことの違法があつても、その違法が株主総会決議の結果に異動をおよぼすと認められないときは、右決議取消の請求を棄却することができる。