一 記名株式を目的とする質権の設定には、質権設定の合意のほか株券の交付を要するが、それのみで足りると解すべきである。 二 親権の共同行使に違反して親権者の父または母が単独でした未成年の子の財産についての処分行為は無効である。
一 記名株式を目的とする質権の設定の要件 二 親権の共同行使に違反して親権者の父または母が単独でした未成年の子の財産についての処分行為の効力
商法205条(昭和41年法律83号による改正前のもの。),商法207条,商法209条,民法824条,民法825条
判旨
父母が共同して親権を行使すべき場合に、父母の一方が単独で行った未成年の子の財産処分行為は、原則として無効である。また、記名株式の質権設定は合意と株券の交付で足り、質権者は株券の占有を継続する限り、裏書等がなくても株式名義人に質権を対抗できる。
問題の所在(論点)
1. 記名株式の質権設定において、裏書等のない株券の占有のみで株式名義人に質権を対抗できるか。 2. 父母が共同親権者である場合、父が単独で行った子の財産の処分行為の効力はどうなるか。
規範
1. 記名株式の質入れには、質権設定の合意のほか株券の交付を必要とするが(商法207条)、質権者がその株券の占有を継続する限り、裏書や譲渡証書の添付がなくとも、その権利を株式名義人に対抗できる。 2. 未成年の子の財産管理・処分等の親権行使は、父母が共同して行うべきであり(民法824条、825条)、これに違反して共同親権者の名義を用いず、父または母が単独で行った行為は無効である。
重要事実
未成年者A1・A2の父である上告人A3は、自己の株券及びA1・A2名義の株券を、Dの依頼に応じて担保(質権)目的でEに交付した。当時、A1・A2には母Gもおり、共同親権の状態にあったが、A3は単独でこの処分行為を行った。後に、この株券交付による質権設定の効力が争われた。
あてはめ
1. 記名株式の質入れについて、商法207条の解釈上、合意と株券の交付があれば足りる。本件質権者は占有を継続しているため、裏書がなくとも所有者に対抗可能である。 2. 本件ではA1・A2に父母双方が存在し、共同親権の原則が適用される。しかし、原審はA3が単独で処分した事実を認定するのみで、母Gとの共同行使やGによる権限付与(承諾)の有無を審理していない。共同行使の要件を満たさない単独行使であれば、その処分は無効といえる。
結論
1. A3自身の株券に関する質権設定は有効であり、上告を棄却する。 2. A1・A2の株券については、共同親権の原則に反し無効となる可能性があるため、審理不尽を理由に原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
共同親権の原則(民法818条3項)に反する単独行使の効力を否定した基本的判例。現在は民法825条により、一方が共同名義で単独で行った場合の相手方の善意保護規定があるが、本判決のように共同名義すら用いない完全な単独行使の場合は依然として無効の法理が妥当しうる。株式質入れの対抗要件(略式質)の理解にも有用。
事件番号: 昭和42(オ)512 / 裁判年月日: 昭和43年9月5日 / 結論: 破棄差戻
株式会社が商法第二一〇条の規定に違反して自己株式の質受をした場合には、右質受は無効である。