死刑の量刑が維持された事例(元警官妻子3人殺害事件)
刑法11条、刑法199条、刑訴法411条2号
判旨
死刑の選択が許容されるか否かの判断において、殺害態様の残虐性、強固な殺意、結果の重大性、動機、遺族の処罰感情等を総合考慮し、被告人に前科がない等の事情を考慮しても刑事責任が極めて重大である場合には、死刑の科刑はやむを得ないものとして是認される。
問題の所在(論点)
殺害の計画性が認められず動機が不明であるとともに、被告人に前科がないという有利な事情が存在する事案において、3名を殺害したことに対する死刑の科刑が刑罰の均衡を失し、著しく不当であるといえるか(死刑選択の適否)。
規範
死刑の適用にあたっては、いわゆる永山基準(最高裁昭和58年7月8日判決)に基づき、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の観点からもやむを得ない場合に限られる。
重要事実
被告人は自宅において、妻(当時38歳)、長男(当時9歳)、長女(当時6歳)の計3名の頚部を圧迫またはひも状の物で絞め続けて窒息死させた。被告人は犯行を否認しており、計画性は認められず動機も不明である。一方で、妻からは日常的に厳しく叱責される等のあつれきがあった。被告人には前科前歴はないが、遺族は厳しい処罰感情を示しており、被告人自身に反省悔悟の情は見られない。
あてはめ
殺害の態様は、数分間頚部を絞め続ける行為を3回繰り返したもので、確定的で強固な殺意に基づく。3名の生命を奪った結果は極めて重大であり、生命軽視の態度は甚だしい。動機について、年少の子2名については酌量の余地がなく、妻との関係における心情を斟酌しても限度がある。犯行を否認し罪と向き合わない姿勢から反省は認められず、遺族の処罰感情も峻烈である。これらの事情に照らせば、前科がないことを考慮しても、刑事責任は極めて重大であると評価される。
結論
本件における死刑の科刑は、罪罰の均衡や一般予防の観点からやむを得ないものとして、原判決の維持を是認する(上告棄却)。
実務上の射程
被害者が3名にのぼる殺人事件において、計画性が認められない場合や前科がない場合であっても、殺害態様の執拗性・強固な殺意、反省の欠如といった他要素が重い場合には、死刑選択が肯定され得ることを示した。裁判員裁判の量刑判断を尊重する近時の最高裁の傾向に沿うものである。
事件番号: 平成18(あ)34 / 裁判年月日: 平成21年12月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名を殺害した殺人被告事件において、経済的利得の保持等を目的とした身勝手な動機、執拗かつ残虐な殺害態様、計画性、重大な結果、及び不合理な弁解に終始する反省の欠如等の諸事情に照らせば、死刑判決の維持は止むを得ない。 第1 事案の概要:保険外交員の被告人が、架空契約に伴う横領等の不正発覚を免れるため、…
事件番号: 平成6(あ)1024 / 裁判年月日: 平成10年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】半年余りの間に3名の命を奪った結果は極めて重大であり、犯行態様が冷酷、残忍かつ非情であって、遺族の被害感情も極めて厳しい等の事情がある場合には、被告人に有利な事情を考慮しても死刑の科刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共に借金トラブルからBを殺害・遺棄し、その後、共犯者の父Dか…