死刑の量刑が維持された事例(北見の保険外交員による顧客夫婦殺害事件)
判旨
2名を殺害した殺人被告事件において、経済的利得の保持等を目的とした身勝手な動機、執拗かつ残虐な殺害態様、計画性、重大な結果、及び不合理な弁解に終始する反省の欠如等の諸事情に照らせば、死刑判決の維持は止むを得ない。
問題の所在(論点)
2名の殺害を内容とする殺人罪において、被告人が犯行を否認し反省の態度を欠く場合、第一審の死刑判決を維持することが量刑上不当(刑訴法411条2号)といえるか。
規範
死刑の選択に際しては、犯行の性質、動機、態様(殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(殺害人数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑均衡及び一般予防の見地からやむを得ない場合に認められる(永山基準を前提とした総合判断)。
重要事実
保険外交員の被告人が、架空契約に伴う横領等の不正発覚を免れるため、顧客である夫妻の殺害を計画。夫の昼寝中に訪問し、妻の後頸部をドライバーで多数回突き刺し、さらに出刃包丁で追撃して計60箇所以上の傷を負わせ殺害。続けて就寝中の夫も包丁で多数回突き刺し殺害した。被告人は約13年間逃亡し、公判途中から証拠捏造を主張して犯行を否認した。
あてはめ
動機は自己の不正発覚を免れるための口封じであり悪質である。態様も凶器を準備した計画的犯行で、60箇所以上突き刺すなど執拗かつ残虐である。結果は2名の生命を奪い極めて重大である。情状面でも、13年の逃亡後に捜査機関の証拠捏造を主張する不合理な弁解をしており、反省の念は認められない。初犯であること等の有利な事情を考慮しても、罪責は誠に重大である。
結論
被告人を死刑に処した第一審判決を維持した原判決は、やむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
死刑選択の妥当性が争われる事案において、特に殺害人数が2名の場合の判断枠組みを示す。永山基準に沿いつつ、「殺害態様の残虐性」「計画性」「犯行後の不合理な弁解(反省の欠如)」を重視して死刑を肯定する際の論法として有用である。
事件番号: 平成12(あ)1778 / 裁判年月日: 平成17年1月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的の殺人2件について、実行行為の主導性、執拗かつ残虐な犯行態様、遺族の厳しい処罰感情等の諸事情を総合考慮し、死刑の科刑を是認した事例。 第1 事案の概要:被告人は、(1)知人と共謀し、知人の債務免脱等のため、被害者を腰ひもで絞殺して自殺を偽装し、報酬700万円を受領した。その約4年半後、(…
事件番号: 平成14(あ)317 / 裁判年月日: 平成18年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、2名の生命を奪った計画的かつ残忍な犯行において、被告人の役割が中心的であれば、酌むべき情状を考慮しても死刑を選択することはやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、(1)知人男性を車内で絞殺して死体をコンクリートで固めて遺棄し、(2)その2…
事件番号: 平成12(あ)1634 / 裁判年月日: 平成16年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的の殺人2件を含む事案において、被告人が首謀者として犯行を主導し、冷酷かつ残忍な方法で実行したこと等の情状を重視し、被告人の不遇な成育歴を考慮しても死刑判決を維持した事案である。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、(1)知人男性に保険を掛け殺害し保険金約5014万円を詐取、(2…