死刑の量刑が維持された事例(仙台・高知の連続保険金目的殺人事件)
判旨
保険金目的の殺人2件について、実行行為の主導性、執拗かつ残虐な犯行態様、遺族の厳しい処罰感情等の諸事情を総合考慮し、死刑の科刑を是認した事例。
問題の所在(論点)
殺害された被害者が2名であり、保険金目的の利欲的動機に基づく殺人事件において、死刑の選択が許容されるか。特に、計画性、犯行態様の残虐性、および被告人の役割が死刑選択にどう影響するか。
規範
死刑の選択に当たっては、永山事件判決(最判昭58.7.8)の示した9項目(犯行の罪質、動機、態様、特に殺害方法の執拗性・残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状)を総合的に考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極めてやむを得ない場合に認められる。
重要事実
被告人は、(1)知人と共謀し、知人の債務免脱等のため、被害者を腰ひもで絞殺して自殺を偽装し、報酬700万円を受領した。その約4年半後、(2)別の知人を殺害すれば保険金の一部を報酬として得られると期待し(実際には保険失効)、共犯者を誘い込み、鉄亜鈴での殴打や胸部を強く踏み付ける等の暴行を長時間加え殺害し、遺体を遺棄した。被告人は(2)の犯行において立案・主導的な役割を果たしていた。
あてはめ
まず、動機は保険金取得を目的とした利欲的なものであり、極めて悪質である。態様について、(1)は周到な計画に基づく冷酷なものであり、(2)は身体の自由を失った被害者を長時間苦しめた上、鉄亜鈴や土足でとどめを刺すなど執拗かつ残虐である。結果について、2名の生命を奪った事実は極めて重大である。また、(1)では実行行為の全てを担い、(2)では犯行を立案主導し共犯者を抱き込んでおり、責任は重い。遺族の処罰感情も厳しく、自殺や交通事故を装う偽装工作や遺体遺棄等の犯行後の情状も不良である。罰金前科以外に前科がない等の事情を考慮しても、罪責は誠に重大といえる。
結論
被告人の刑責は誠に重大であり、死刑の科刑はやむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
被害者が2名の事案において、死刑選択の可否を検討する際のメルクマールとなる。特に「利欲的動機」「執拗・残虐な態様」「主導的役割」「偽装工作等の犯行後の情状」が重く評価されることを示しており、永山基準の具体的なあてはめモデルとして活用できる。
事件番号: 平成14(あ)126 / 裁判年月日: 平成17年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極めて重大な結果を招いた組織的・計画的な殺人事件において、動機に酌量の余地がなく犯行態様が冷酷・残忍である場合には、自首や反省等の事情を考慮しても死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:宗教教団幹部であった被告人は、共犯者らと共謀し、(1)教団からの脱会を希望した信者を口封じ目的で殺害し、(2)…
事件番号: 昭和52(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和55年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑を判断するにあたっては、犯行の罪質、動機、計画性、態様、被害結果及び社会的影響の重大性などの諸要素を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大である場合には、死刑を選択することもやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は約10か月の間に、共謀のうえ保険金目的で知人Bを殺害したほか、単独で知人C…
事件番号: 平成12(あ)1634 / 裁判年月日: 平成16年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的の殺人2件を含む事案において、被告人が首謀者として犯行を主導し、冷酷かつ残忍な方法で実行したこと等の情状を重視し、被告人の不遇な成育歴を考慮しても死刑判決を維持した事案である。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、(1)知人男性に保険を掛け殺害し保険金約5014万円を詐取、(2…