死刑の量刑が維持された事例(高知の保険金目的殺人事件)
判旨
保険金目的の殺人2件を含む事案において、被告人が首謀者として犯行を主導し、冷酷かつ残忍な方法で実行したこと等の情状を重視し、被告人の不遇な成育歴を考慮しても死刑判決を維持した事案である。
問題の所在(論点)
保険金目的による2名の殺人および詐欺等が行われた事案において、被告人の不遇な成育歴等の有利な事情を考慮してもなお、死刑の選択が許容されるか。
規範
死刑の適用については、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の方法の執拗性・残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極めてやむを得ない場合に認められる(永山基準の枠組みを前提とする)。
重要事実
被告人は、共犯者と共謀の上、(1)知人男性に保険を掛け殺害し保険金約5014万円を詐取、(2)その5年後、別の女性に保険を掛け殺害・死体遺棄し保険金を詐取しようとした。いずれも知的能力の低い被害者を懐柔して同居させ、泥酔状態や就寝中の無防備な隙を突いて頭部を石で殴打し、鼻口を塞いで窒息死させた。被告人は首謀者として計画し、自ら殺害の第一撃を加えるなど主導的役割を果たした。
あてはめ
まず、動機は保険金目的であり酌量の余地がない。犯行態様は、無防備な被害者を石で殴打し窒息死させるもので冷酷、非情、残忍である。また、被告人は首謀者として犯行を立案し、実行行為でも重要な役割を担っており、主導的立場にある。結果として2名の命が奪われ、多額の保険金詐取や交通事故を装った死体遺棄も行われている。遺族の処罰感情も厳しく、社会への影響も大きい。これらの事情に照らせば、貧しい成育歴等の情状を考慮しても、被告人の刑事責任は極めて重大であるといえる。
事件番号: 平成19(あ)352 / 裁判年月日: 平成23年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の殺害を含む一連の犯行について、動機に酌量の余地がなく殺害態様も冷酷非道である場合、被告人の病状や一定の反省等の事情を考慮しても、死刑を選択した一審判決の維持は相当である。 第1 事案の概要:被告人は、保険金詐欺の発覚を恐れ、加害者役のAに睡眠導入剤を飲ませて抵抗力を奪い、頸部圧迫により窒息死…
結論
被告人を死刑に処した第一審判決を維持した原判決は、当裁判所もこれを是認せざるを得ない(死刑適用は相当である)。
実務上の射程
被害者が2名であっても、保険金目的という動機の悪質性、計画的かつ残虐な実行態様、首謀者としての主導性が認められる場合には、死刑の選択が肯定されることを示した事例。死刑適用判断における「永山基準」の具体的あてはめのモデルとして有用である。
事件番号: 平成16(あ)1709 / 裁判年月日: 平成20年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的で2名を殺害し、強盗等を行った事案において、計画的かつ残忍な犯行態様、金銭欲による動機、主導的役割等の事情を重視し、死刑の適用を肯定した。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀し、(1)保険金目的で共犯者の夫を薬物で眠らせた上、海中に沈めて殺害し約9870万円を詐取した。(2)約6年…
事件番号: 昭和56(あ)1552 / 裁判年月日: 平成元年3月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金殺人を目的とした執拗かつ悪質非道な一連の犯行において、主謀者の一人として犯行を推進した被告人に対し、死刑を適用することは不当ではない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aらと共謀し、巨額の保険金を騙し取る目的で複数の役員を標的とした。第一の計画では、代表役員を溺死させるべく3回にわたり殺人…
事件番号: 昭和63(あ)589 / 裁判年月日: 平成8年9月20日 / 結論: 破棄自判
保険金を騙取する目的で、暴力団幹部と共謀して殺人予備、殺人未遂、殺人等の罪を犯すなどしたという本件事案の性質や罪質の重大性、一連の犯行は、被告人が発案し暴力団幹部に計画を持ち掛けたのを契機として企図され、実行に移されたもので、被告人は、各被害者に保険を掛けるなどしたほか、直接殺人予備行為をし、保険金を騙取したり保険会社…
事件番号: 平成19(あ)2275 / 裁判年月日: 平成23年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の殺害を含む複数の重大な犯罪について、遺族である実子が死刑回避を強く望むという重い情状がある場合でも、犯行の動機、計画性、残虐性、結果の重大性に鑑みれば、死刑の選択はやむを得ない。被告人の刑事責任の極めて重大な事案では、家族の助命嘆願があっても死刑判決を維持することが正当化される。 第1 事案…