死刑の量刑が維持された事例(宮崎の2名殺害等事件)
判旨
2名の殺害を含む一連の犯行について、動機に酌量の余地がなく殺害態様も冷酷非道である場合、被告人の病状や一定の反省等の事情を考慮しても、死刑を選択した一審判決の維持は相当である。
問題の所在(論点)
殺害された被害者が2名であり、被告人に病状等の酌むべき事情がある場合において、極刑を選択することが量刑の均衡を失し、刑訴法411条2号(量刑不当)に該当するか。
規範
死刑の適用については、いわゆる永山基準(最判昭58.7.8)に基づき、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡、一般予防の観点からもやむを得ない場合に認められる。
重要事実
被告人は、保険金詐欺の発覚を恐れ、加害者役のAに睡眠導入剤を飲ませて抵抗力を奪い、頸部圧迫により窒息死させ、死体を車両ごと埋没させた。さらに、借金トラブルや口封じのため、税理士Bを共犯者と共に拘束し、トラックで胸部を轢いた後、ごみ収集車の積込み装置にかき込ませて殺害・遺棄した。被告人には複数の服役前科があり、筋ジストロフィー等の持病があった。
あてはめ
動機面では、自己の犯罪の発覚阻止や金銭目的であり、身勝手で酌量の余地がない。態様面では、抵抗不能の状態にした上での窒息死や、生きたままごみ収集車に投入するなどの行為は残忍かつ冷酷非道である。結果面でも2名の生命を奪った責任は重く、遺族の処罰感情も峻烈である。犯罪性向の深化も認められ、病状や一部のしょく罪寄附等の事情を考慮しても、刑事責任は極めて重大であるといえる。
結論
被告人を死刑に処した第一審判決を維持した控訴審判決の判断は、正当として是認できる。
事件番号: 平成12(あ)1634 / 裁判年月日: 平成16年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的の殺人2件を含む事案において、被告人が首謀者として犯行を主導し、冷酷かつ残忍な方法で実行したこと等の情状を重視し、被告人の不遇な成育歴を考慮しても死刑判決を維持した事案である。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、(1)知人男性に保険を掛け殺害し保険金約5014万円を詐取、(2…
実務上の射程
被害者が2名の場合であっても、犯行態様の残虐性や動機の卑劣さが顕著であれば死刑が選択される有力な先例となる。また、被告人の身体的疾患(筋ジストロフィー等)が、死刑の選択を回避する決定的な事由にはならないことを示している。
事件番号: 平成19(あ)2275 / 裁判年月日: 平成23年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の殺害を含む複数の重大な犯罪について、遺族である実子が死刑回避を強く望むという重い情状がある場合でも、犯行の動機、計画性、残虐性、結果の重大性に鑑みれば、死刑の選択はやむを得ない。被告人の刑事責任の極めて重大な事案では、家族の助命嘆願があっても死刑判決を維持することが正当化される。 第1 事案…
事件番号: 令和2(あ)124 / 裁判年月日: 令和5年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度および刑法199条に死刑を定めたことは憲法9条、13条、31条、36条、98条2項に違反しない。保険金目的の計画的な殺人事件において、首謀者として主導的役割を果たし、2名の生命を奪った結果が重大である場合、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、知人らと共謀し、保険金を得る…
事件番号: 平成16(あ)1709 / 裁判年月日: 平成20年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的で2名を殺害し、強盗等を行った事案において、計画的かつ残忍な犯行態様、金銭欲による動機、主導的役割等の事情を重視し、死刑の適用を肯定した。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀し、(1)保険金目的で共犯者の夫を薬物で眠らせた上、海中に沈めて殺害し約9870万円を詐取した。(2)約6年…
事件番号: 平成26(あ)639 / 裁判年月日: 平成29年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が犯人であることの証明が間接事実のみによる場合であっても、(1)被害者との近接した接触、(2)犯行道具の事前入手、(3)自殺・事故死の可能性の排除、(4)殺害の動機等の各間接事実を総合考慮し、被告人が犯人であることについて合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の証明がなされていると判断される場…