死刑の量刑が維持された事例(佐賀・長崎夫子連続保険金殺人事件)
判旨
保険金目的で2名を殺害し、強盗等を行った事案において、計画的かつ残忍な犯行態様、金銭欲による動機、主導的役割等の事情を重視し、死刑の適用を肯定した。
問題の所在(論点)
死刑選択の許容性(刑訴法411条2号の量刑不当の有無)。特に、2名の殺害および強盗等の余罪がある事案において、死刑を維持した原判決が是認されるか。
規範
死刑の適用にあたっては、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の方法の執拗性・残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも、一般予防の見地からも死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に許される(永山基準参照)。
重要事実
被告人は、共犯者と共謀し、(1)保険金目的で共犯者の夫を薬物で眠らせた上、海中に沈めて殺害し約9870万円を詐取した。(2)約6年後、高齢女性方で強盗を行い現金等を強取した。(3)さらに約1か月後、保険金目的で共犯者の実子(当時16歳)を(1)と同様の手法で殺害し、保険金を詐取しようとしたが未遂に終わった。被告人は(3)の犯行を主導し、いずれも実行行為を担った。
あてはめ
まず、保険金目的で2名の生命を奪った動機に酌量の余地はなく、罪質は非常に悪い。態様についても、薬物で自由を奪い海中に沈めるという計画的かつ冷酷・残忍なものである。結果は2名の生命侵害と多額の詐欺であり極めて甚大である。役割においても、被告人は実行を担うのみならず、(3)では抵抗する共犯者を説得し主導した。逮捕後の自白や共犯者との均衡を考慮しても、罪刑の均衡および一般予防の観点から死刑は免れない。
結論
事件番号: 平成12(あ)1634 / 裁判年月日: 平成16年11月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的の殺人2件を含む事案において、被告人が首謀者として犯行を主導し、冷酷かつ残忍な方法で実行したこと等の情状を重視し、被告人の不遇な成育歴を考慮しても死刑判決を維持した事案である。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、(1)知人男性に保険を掛け殺害し保険金約5014万円を詐取、(2…
被告人の罪責は極めて重大であり、死刑に処した第1審判決を維持した原判断は相当である。上告棄却。
実務上の射程
被害者が2名であっても、犯行の計画性、残虐性、利欲的動機、主導的役割などの事情が顕著であれば、死刑選択が肯定されることを示す事例。特に、共犯者の親族を殺害対象とするなど反社会性が強い事案の量刑判断の参考となる。
事件番号: 平成16(あ)1368 / 裁判年月日: 平成19年2月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が多額の保険金を取得する目的で、他人の生命を奪った事案において、犯行の計画性、残虐性、結果の重大性に鑑み、死刑判決を維持した一審・二審の判断を相当とした。 第1 事案の概要:被告人は、保険金を不正に取得する目的で、特定の人物(被害者2名)を殺害した。犯行は計画的かつ巧妙に行われ、多額の利益を…
事件番号: 平成17(あ)403 / 裁判年月日: 平成20年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の保険金殺人等の事案において、計画的かつ巧妙な犯行態様、2名の殺害という結果、多額の搾取金額、および被告人の反省の欠如等の諸事情を考慮し、共犯者との刑の均衡を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は愛人と共謀し、多額の生命保険が掛けられた3名の男性に対し、保険金目的の殺…
事件番号: 平成16(あ)932 / 裁判年月日: 平成19年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、利得目的で2名の男性をそれぞれけん銃で頭部を…
事件番号: 平成15(あ)1624 / 裁判年月日: 平成19年1月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条等に違反せず、保険金目的の計画的かつ冷酷な殺人および強盗殺人について、各被告人の役割や犯情を総合考慮し、死刑の適用が是認された。 第1 事案の概要:被告人A、B、Cは共謀し、(1)保険金目的でフィリピンにて1名を窒息死させ、(2)同様に別の1名を窒息死させて保険…