死刑の量刑が維持された事例(マニラ保険金殺人等事件)
判旨
死刑制度は憲法13条、31条、36条等に違反せず、保険金目的の計画的かつ冷酷な殺人および強盗殺人について、各被告人の役割や犯情を総合考慮し、死刑の適用が是認された。
問題の所在(論点)
死刑制度の合憲性、および複数の保険金殺人・強盗殺人を行った被告人らに対する死刑適用の是非(量刑の妥当性)。
規範
死刑制度の合憲性を前提とした上で、具体的な死刑適用にあたっては、犯行の罪質、動機、態様(特に冷酷性・残忍性)、結果の重大性(殺害人数等)、被害者の遺族の感情、社会的影響、さらには被告人の役割や反省の状況等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であってやむを得ない場合に認められる。
重要事実
被告人A、B、Cは共謀し、(1)保険金目的でフィリピンにて1名を窒息死させ、(2)同様に別の1名を窒息死させて保険金を詐取しようとした。また、(3)被告人AとBは、恐喝被害者を口封じと金品目的で拉致し、ネクタイで絞殺した上で死体を遺棄した。Aは全3件の実行に関与し首謀者的役割を果たした。Bも全3件で主要部分を分担。Cは2件の殺人について誘い込みや発案を行い主導的立場にあった。
あてはめ
罪質は極めて悪質で、結果も3名の生命を奪っており極めて重大である。動機は保険金取得や罪跡隠滅という利欲的・自己中心的なもので、睡眠薬を使用し窒息死させる等の犯行態様は冷酷かつ非情である。Aは首謀者として、Bは実行の積極的分担者として、Cは犯行の誘い込み・発案者として、いずれも刑事責任は誠に重大といえる。反省の態度等の有利な事情を考慮しても、原審の死刑判決を維持することはやむを得ない。
結論
被告人らの上告を棄却し、一審の死刑判決を維持した控訴審判決を是認する。
事件番号: 平成16(あ)932 / 裁判年月日: 平成19年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、利得目的で2名の男性をそれぞれけん銃で頭部を…
実務上の射程
永山基準を踏襲しつつ、保険金目的の計画的殺人の悪質性を強調する事案。複数の殺人(強盗殺人含む)が重なる場合、役割の軽重にかかわらず主導的立場や積極的実行行為があれば死刑が回避されないことを示す実例として機能する。
事件番号: 平成8(あ)168 / 裁判年月日: 平成12年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、複数の殺人・強盗殺人事件において、動機・態様・結果の重大性等の諸事情を総合考慮し、死刑の適用がやむを得ない場合には、これを是認することができる。 第1 事案の概要:被告人は約6年半の間に、2件の殺人と2件の強盗殺人等を犯した。具体的には、店舗店番の女…
事件番号: 平成16(あ)1709 / 裁判年月日: 平成20年1月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】保険金目的で2名を殺害し、強盗等を行った事案において、計画的かつ残忍な犯行態様、金銭欲による動機、主導的役割等の事情を重視し、死刑の適用を肯定した。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀し、(1)保険金目的で共犯者の夫を薬物で眠らせた上、海中に沈めて殺害し約9870万円を詐取した。(2)約6年…
事件番号: 平成6(あ)420 / 裁判年月日: 平成11年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かは、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、妻の実姉を絞殺して死体を遺棄…
事件番号: 平成26(あ)639 / 裁判年月日: 平成29年4月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が犯人であることの証明が間接事実のみによる場合であっても、(1)被害者との近接した接触、(2)犯行道具の事前入手、(3)自殺・事故死の可能性の排除、(4)殺害の動機等の各間接事実を総合考慮し、被告人が犯人であることについて合理的な疑いを差し挟む余地がない程度の証明がなされていると判断される場…