死刑事件(高知県内三人殺害事件)
判旨
死刑の選択が許容されるか否かは、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。
問題の所在(論点)
死刑の合憲性、および複数の殺人・強盗殺人等が行われた事案において、第一審および控訴審が選択した死刑の量刑が、刑罰の均衡を著しく失し、刑訴法411条2号(量刑不当)により破棄すべきものか。
規範
死刑制度は憲法36条に違反しない(最大判昭23.3.12参照)。具体的な量刑に際しては、①殺害された被害者数等の結果の重大性、②犯行の態様(冷酷性・非道性)、③動機、④犯行後の隠蔽工作等の犯情、⑤遺族の被害感情等を総合し、死刑の科刑が罪刑の均衡や一般予防の観点からやむを得ないといえるかを判断すべきである。
重要事実
被告人は、妻の実姉を絞殺して死体を遺棄し、預金を騙取した(第一の事件)。さらに、第一の事件を隠蔽するため、生存を偽装する手紙の代筆を依頼した知人女性を絞殺・遺棄した(第二の事件)。その後、妻の父親を金づちで殴打し刺殺して金品を窃取した(第三の事件)。被告人は計3名の生命を奪い、事後に隠蔽工作を行っていた。
あてはめ
まず、3名の生命を奪ったという結果は極めて重大である。次に、被害者はいずれも親族や知人であり、相手方の信頼を裏切るものであって「冷酷、非道な犯行」と評価される。さらに、事後に様々な隠蔽工作を行っている点は「犯情が悪質」であり、遺族の被害感情も非常に厳しい。これらの事実を総合すれば、被告人の罪責は極めて重大であり、死刑の科刑を是認せざるを得ない。
結論
事件番号: 平成6(あ)1195 / 裁判年月日: 平成11年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の前科や犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であってやむを得ない場合に限り許容される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者による他言を恐れて当該共犯者をダルマジャッキで頭部を数回強…
本件各犯行の罪責は極めて重大であり、死刑を維持した原判決に刑訴法411条を適用すべき職権調査事由(量刑不当)は認められない。上告棄却。
実務上の射程
死刑選択の基準を示した「永山基準(最判昭58.7.8)」を踏襲する実務上の判断例である。特に「殺害された被害者数(3名)」と「犯行の冷酷性・非道性(親族間・隠蔽目的)」を重視する判断枠組みは、裁判員裁判における量刑論の基礎となる。答案上は、生命侵害の数という結果の重大性を軸に、態様の悪質さを加味して死刑の相当性を論じる際の準拠となる。
事件番号: 平成16(あ)932 / 裁判年月日: 平成19年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、利得目的で2名の男性をそれぞれけん銃で頭部を…
事件番号: 平成12(あ)690 / 裁判年月日: 平成17年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の強盗殺人等に及んだ事案において、被告人の役割が共犯者と比較して主導性や積極性に劣り、自供による真相解明への貢献や反省の情が認められる場合には、死刑の選択を回避し無期懲役とした一審判決を維持することが許容される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aと共に、2件の強盗殺人、1件の恐喝、および死…
事件番号: 昭和62(あ)246 / 裁判年月日: 平成4年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断においては、犯行の罪質、動機、計画性、態様、殺害方法の残忍性、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合的に考慮すべきであり、情状を酌量しても罪責が重大な場合には死刑が是認される。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済のため、同僚の妻Bから健康保険証を奪って金員を詐取しようと計…
事件番号: 平成8(あ)168 / 裁判年月日: 平成12年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、複数の殺人・強盗殺人事件において、動機・態様・結果の重大性等の諸事情を総合考慮し、死刑の適用がやむを得ない場合には、これを是認することができる。 第1 事案の概要:被告人は約6年半の間に、2件の殺人と2件の強盗殺人等を犯した。具体的には、店舗店番の女…