死刑事件(熊谷の3人殺し事件)
判旨
死刑の量刑判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の前科や犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であってやむを得ない場合に限り許容される。
問題の所在(論点)
死刑の量刑判断(刑法11条、刑訴法411条)において、どのような要素を考慮し、いかなる場合に死刑の選択が正当化されるか。
規範
死刑の選択が許されるか否かは、(1)犯行の性質(罪質)、(2)動機、(3)犯行態様(特に殺害方法の残虐性・非道性)、(4)結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、(5)遺族の被害感情、(6)社会的影響、(7)被告人の年齢、(8)前科、(9)犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重く、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも死刑の選択がやむを得ないといえる場合に限られる(いわゆる永山基準)。
重要事実
被告人は、共犯者による他言を恐れて当該共犯者をダルマジャッキで頭部を数回強打して殺害した(殺人罪)。また、別の被害者が多額の預金を有することを知り、預金通帳等を奪う目的で、被害者を河川敷に連れ出し、石塊で頭部を数回殴打して殺害し、通帳を強取して死体を遺棄した(強盗殺人罪・死体遺棄罪)。さらに、短期間のうちにこれらを含む複数の重大犯罪を重ね、併せて詐欺や恐喝等の犯罪も敢行していた。
あてはめ
まず、動機については、口封じや金員強取という身勝手なものであり、同情の余地はない。次に、犯行態様は、ジャッキや石塊で頭部を強打するなど残虐かつ非道である。結果についても、短期間に複数の尊い人命を奪っており極めて重大である。加えて、わずか2年余りの間に重大な犯行を繰り返しており、被告人の人命軽視の態度は甚だしい。遺族の被害感情や社会的影響、さらには詐欺等の他罪も併せ考慮すると、格別酌量すべき事情は見当たらない。したがって、被告人の罪責は誠に重いといえる。
事件番号: 平成6(あ)420 / 裁判年月日: 平成11年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かは、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、妻の実姉を絞殺して死体を遺棄…
結論
被告人の罪責は誠に重く、死刑の科刑はやむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
死刑選択の可否が争点となる事案において、考慮すべき9つの要素を網羅的に提示したリーディングケースである。答案上では、特に「罪質・態様・結果の重大性」を中核に据えつつ、これらを総合評価して「やむを得ない」と言えるかという構成で論述する。
事件番号: 平成16(あ)932 / 裁判年月日: 平成19年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、利得目的で2名の男性をそれぞれけん銃で頭部を…
事件番号: 平成12(あ)690 / 裁判年月日: 平成17年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の強盗殺人等に及んだ事案において、被告人の役割が共犯者と比較して主導性や積極性に劣り、自供による真相解明への貢献や反省の情が認められる場合には、死刑の選択を回避し無期懲役とした一審判決を維持することが許容される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aと共に、2件の強盗殺人、1件の恐喝、および死…
事件番号: 昭和62(あ)246 / 裁判年月日: 平成4年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断においては、犯行の罪質、動機、計画性、態様、殺害方法の残忍性、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合的に考慮すべきであり、情状を酌量しても罪責が重大な場合には死刑が是認される。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済のため、同僚の妻Bから健康保険証を奪って金員を詐取しようと計…
事件番号: 昭和57(あ)303 / 裁判年月日: 平成2年2月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択は、犯行の計画性、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の役割等を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大であって罪刑の均衡や一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aと共謀の上、約1か月の短期間に、何ら落ち度のない女性2…