強盗殺人等被告事件につき,無期懲役に処した第1審判決を維持した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められないとされた事例
刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2号
判旨
複数の強盗殺人等に及んだ事案において、被告人の役割が共犯者と比較して主導性や積極性に劣り、自供による真相解明への貢献や反省の情が認められる場合には、死刑の選択を回避し無期懲役とした一審判決を維持することが許容される。
問題の所在(論点)
2名の殺害を含む強盗殺人等の事案において、共犯者との比較における主導性の欠如や、捜査への協力(自供)等の事後の情状を考慮して、死刑ではなく無期懲役を選択することが許されるか(死刑選択基準の具体的適用)。
規範
死刑の選択に当たっては、永山事件判決(最判昭58.7.8)の基準に照らし、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が極めて重大であって罪刑の均衡、一般予防の観点からやむを得ない場合に限られる。
重要事実
被告人は、共犯者Aと共に、2件の強盗殺人、1件の恐喝、および死体遺棄等に及んだ。被告人は被害者の誘い出しや拘束を行い、Aが拳銃で2名を殺害した。被告人は利得をAと平分し、計画・実行において重要な役割を果たしたが、具体的な殺害行為は行っていない。Aが犯行を主導し利得を独占する場面もあった。被告人は捜査段階で詳細な自供を行い、遺体発見や真相解明に貢献したほか、反省の情を示しており、同種前科はなかった。
あてはめ
本件は2名を射殺し遺体を埋没させた極めて悪質な犯行であり、死刑選択を十分考慮すべき事案である。しかし、(1)実行行為の核心(発砲)は常にAが行い、Aが主導権を握っていたこと、(2)被告人の役割はAとの比較において主導性・積極性に劣る面があること、(3)被告人が自供により真相解明に寄与したことは、事案の全容解明において大きな価値があること、(4)反省の情や前科がないこと等の酌むべき事情がある。これらを総合すると、死刑を選択しなかった原判決が著しく正義に反するとまではいえない。
事件番号: 平成16(あ)932 / 裁判年月日: 平成19年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、利得目的で2名の男性をそれぞれけん銃で頭部を…
結論
被告人を無期懲役に処した一審判決を維持した原判決の量刑判断は相当であり、上告を棄却する。
実務上の射程
死刑基準(永山基準)が維持されつつも、共犯事件において「殺害の実行行為の有無」や「主導性の程度」、さらに「自供による真相解明への寄与」が死刑回避の重要な考慮要素となることを示す。答案では、生命侵害の重大性と、被告人の個別的な帰責性の程度を比較衡量する際の材料として活用できる。
事件番号: 昭和57(あ)303 / 裁判年月日: 平成2年2月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択は、犯行の計画性、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の役割等を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大であって罪刑の均衡や一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aと共謀の上、約1か月の短期間に、何ら落ち度のない女性2…
事件番号: 平成9(あ)719 / 裁判年月日: 平成11年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の重大事件において、共犯者の一方が主導的立場にあっても、他方の主体的な関与や役割が極めて重い場合には、両者の刑責に歴然とした差異を設けるべきとは限らない。そのため、既に無期懲役が確定した共犯者との均衡を考慮して被告人を無期懲役とした原判決の量刑は、著しく正義に反するとまではいえない。 第…
事件番号: 平成6(あ)420 / 裁判年月日: 平成11年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かは、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、妻の実姉を絞殺して死体を遺棄…
事件番号: 平成6(あ)1195 / 裁判年月日: 平成11年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の前科や犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であってやむを得ない場合に限り許容される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者による他言を恐れて当該共犯者をダルマジャッキで頭部を数回強…