強盗殺人等被告事件について、無期懲役に処した第一審判決を是認した控訴審判決には量刑の基礎となる事実に関する認定、評価の誤り又はその疑いが認められるが、いまだ破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例
判旨
強盗殺人等の重大事件において、共犯者の一方が主導的立場にあっても、他方の主体的な関与や役割が極めて重い場合には、両者の刑責に歴然とした差異を設けるべきとは限らない。そのため、既に無期懲役が確定した共犯者との均衡を考慮して被告人を無期懲役とした原判決の量刑は、著しく正義に反するとまではいえない。
問題の所在(論点)
死刑選択が検討されるべき重大な強盗殺人事件において、共犯者間の主従関係や役割の認定に不備がある場合であっても、共犯者(従属的立場)の刑責が極めて重いことを理由に、主導的立場にある被告人を無期懲役にとどめることは許されるか。
規範
死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様(特に殺害方法の執拗さ・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって罪刑の均衡、一般予防の両見地からもやむを得ない場合に認められる。共犯者が存在する場合、その役割の軽重や共犯者間の刑の均衡も重要な考慮要素となるが、被告人が主導的であっても共犯者が主体的に関与したといえる場合には、共犯者の刑責を基準とした量刑判断が許容される。
重要事実
被告人は、交際相手の19歳の長男(A)と共謀し、Aの両親を殺害して金品を奪おうと計画。被告人は主導的な立場から強固な利欲的動機に基づき、両親を包丁で刺殺し、死体を遺棄した上、預貯金等を騙取した。原審は、被告人が発案者である可能性や指示的立場にあった点を十分に評価しなかった疑いがあるものの、Aもまた実子として睡眠薬を飲ませる等の重要な役割を果たし、主体的に関与して計画を完遂させた事実に着目。既にAの無期懲役刑が確定していたことから、被告人についても一審の無期懲役判決を維持した。
あてはめ
本件では被告人が主導的で利欲的動機も強固であり、発案者であった疑いも強い。しかし、共犯者Aも殺害計画に主体的に同調し、実子という立場を利用して実行に不可欠な役割を担っており、その責任は極めて重い。Aが翻意すれば犯行は不可能であった。このように、Aが本件全般にわたって主体的に関与した以上、被告人とAとの間に刑責の歴然とした差異があるとまでは断定し難い。したがって、Aの無期懲役確定という事情を考慮し、被告人を極刑に処さなかった判断は是認し得る。
事件番号: 平成12(あ)690 / 裁判年月日: 平成17年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の強盗殺人等に及んだ事案において、被告人の役割が共犯者と比較して主導性や積極性に劣り、自供による真相解明への貢献や反省の情が認められる場合には、死刑の選択を回避し無期懲役とした一審判決を維持することが許容される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aと共に、2件の強盗殺人、1件の恐喝、および死…
結論
本件の諸事情を総合考慮すれば、被告人を無期懲役とした原判決の量刑が、破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められない。
実務上の射程
死刑か無期懲役かの選択(永山基準の適用)における、共犯者間の「均衡」の考慮の仕方を示す。主導的な者であっても、共犯者の関与が主体的かつ不可欠であれば、既に確定した共犯者の刑責(無期懲役)に引きずられる形で死刑が回避される余地を認めており、弁護側の量刑反論において有用な射程を持つ。
事件番号: 平成10(あ)39 / 裁判年月日: 平成11年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人を含む重大な事案であっても、犯行の計画性の欠如や前科のない真面目な生活歴、反省悔悟の情といった被告人側の事情を総合考慮し、無期懲役を選択した一審判決を維持した二審の判断は、死刑を選択すべき事案であっても量刑不当として破棄されるべきものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人は借金返済等のた…
事件番号: 平成9(あ)479 / 裁判年月日: 平成11年12月10日 / 結論: 破棄差戻
一人暮らしの老女を冷酷かつ残虐な方法で殺害しその金品を強取した強盗殺人の犯行において、被告人が、共犯者との関係で主導的役割を果たしたこと、強盗殺人罪により無期懲役に処せられて服役しながら、その仮出獄中に再び右犯行に及んだこと等の諸点(判文参照)を総合すると、被告人の罪責は誠に重大であって、特に酌量すべき事情がない限り、…
事件番号: 平成16(あ)932 / 裁判年月日: 平成19年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、利得目的で2名の男性をそれぞれけん銃で頭部を…
事件番号: 平成8(あ)168 / 裁判年月日: 平成12年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、複数の殺人・強盗殺人事件において、動機・態様・結果の重大性等の諸事情を総合考慮し、死刑の適用がやむを得ない場合には、これを是認することができる。 第1 事案の概要:被告人は約6年半の間に、2件の殺人と2件の強盗殺人等を犯した。具体的には、店舗店番の女…