一人暮らしの老女を冷酷かつ残虐な方法で殺害しその金品を強取した強盗殺人の犯行において、被告人が、共犯者との関係で主導的役割を果たしたこと、強盗殺人罪により無期懲役に処せられて服役しながら、その仮出獄中に再び右犯行に及んだこと等の諸点(判文参照)を総合すると、被告人の罪責は誠に重大であって、特に酌量すべき事情がない限り、死刑の選択をするほかなく、原判決が酌量すべき事情として述べるところはいまだ死刑を選択しない事由として十分な理由があると認められないから、第一審判決の無期懲役の科刑を維持した原判決は、甚だしく刑の量定を誤ったものとして破棄を免れない。
第一審判決の無期懲役の科刑を維持した控訴審判決が量刑不当として破棄された事例
刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)11条,刑法(平成7年法律第91号による改正前のもの)240条,刑訴法411条2号
判旨
強盗殺人罪で無期懲役に処せられ、その仮出獄中に再び同種の計画的かつ残虐な強盗殺人を犯した被告人に対し、殺害された被害者が1名であっても、特に酌量すべき事情がない限り死刑の選択を避けることはできない。
問題の所在(論点)
殺害された被害者が1名である場合において、無期懲役の仮出獄中に再び強盗殺人を犯した被告人に対し、死刑を選択しないことが量刑不当として破棄事由(刑訴法411条2号)に当たるか。
規範
死刑の適用は慎重であるべきだが、犯行の罪質、動機、態様(殺害手段の残虐性等)、結果の重大性(被害者数等)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、罪刑の均衡および一般予防の見地から極刑がやむを得ないと認められる場合には、死刑を選択すべきである(永山基準の踏襲)。
重要事実
被告人は強盗殺人罪による無期懲役の仮出獄中、共犯者と共謀して老女を山中に連れ出し、石で強打した上、ビニール紐で絞殺して預金通帳等を奪った。被告人は主導的役割を果たし、犯行後も預金を騙取するなどした。前科(前件強盗殺人)も遊興費のための借金返済という動機や顔見知りを殺害する手法が本件と酷似していた。一・二審は、自白や更生の可能性を理由に無期懲役を選択した。
事件番号: 平成10(あ)39 / 裁判年月日: 平成11年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人を含む重大な事案であっても、犯行の計画性の欠如や前科のない真面目な生活歴、反省悔悟の情といった被告人側の事情を総合考慮し、無期懲役を選択した一審判決を維持した二審の判断は、死刑を選択すべき事案であっても量刑不当として破棄されるべきものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人は借金返済等のた…
あてはめ
本件は1名の殺害であるが、動機に酌量の余地がなく、手段も周到な準備(紐の補強等)に基づく残虐なものである。特に、無期懲役の仮出獄中という刑事責任を深く自覚すべき立場にありながら、前件と酷似した動機・手法で再犯に及んだ点は、被告人の顕著な反社会性を示すものであり極めて悪質である。自白や反省、仮出獄中の生活態度といった事情は、これら重い情状を覆すほどの軽減事由とはいえず、死刑を回避する十分な理由にならない。
結論
被告人を無期懲役とした原判決は事実の評価を誤った量刑不当であり、著しく正義に反する。原判決を破棄し、更なる審理のため差し戻す。
実務上の射程
被害者が1名であっても、無期懲役の仮出獄中の再犯など、前科や犯行態様が極めて悪質な場合には死刑が選択され得ることを示した。司法試験においては、死刑選択の判断枠組み(永山基準)の具体的なあてはめモデルとして、特に「前科・再犯」の評価を論じる際の参考となる。
事件番号: 平成9(あ)719 / 裁判年月日: 平成11年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の重大事件において、共犯者の一方が主導的立場にあっても、他方の主体的な関与や役割が極めて重い場合には、両者の刑責に歴然とした差異を設けるべきとは限らない。そのため、既に無期懲役が確定した共犯者との均衡を考慮して被告人を無期懲役とした原判決の量刑は、著しく正義に反するとまではいえない。 第…
事件番号: 平成12(あ)690 / 裁判年月日: 平成17年7月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】複数の強盗殺人等に及んだ事案において、被告人の役割が共犯者と比較して主導性や積極性に劣り、自供による真相解明への貢献や反省の情が認められる場合には、死刑の選択を回避し無期懲役とした一審判決を維持することが許容される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aと共に、2件の強盗殺人、1件の恐喝、および死…
事件番号: 平成6(あ)420 / 裁判年月日: 平成11年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かは、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、妻の実姉を絞殺して死体を遺棄…
事件番号: 昭和57(あ)303 / 裁判年月日: 平成2年2月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択は、犯行の計画性、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の役割等を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大であって罪刑の均衡や一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者Aと共謀の上、約1か月の短期間に、何ら落ち度のない女性2…