強盗殺人等被告事件につき、無期懲役に処した第一審判決を維持した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例
判旨
強盗殺人を含む重大な事案であっても、犯行の計画性の欠如や前科のない真面目な生活歴、反省悔悟の情といった被告人側の事情を総合考慮し、無期懲役を選択した一審判決を維持した二審の判断は、死刑を選択すべき事案であっても量刑不当として破棄されるべきものとはいえない。
問題の所在(論点)
実親2名を強盗目的で殺害するという極めて重大な罪責を負う事案において、第一審及び原審が死刑を選択せず無期懲役を維持したことが、刑訴法411条2号(判決後の刑の廃止等)及び量刑の著しい不当として破棄すべき事由に当たるか。
規範
死刑の選択を考慮すべき重大な事案であっても、犯行の計画性の有無、被告人の前科・生活歴、反省悔悟の情といった諸般の事情を慎重に考慮し、原判決の量刑が軽すぎてこれを破棄しなければ著しく正義に反すると認められるか否かを、いわゆる永山基準に照らして判断する。
重要事実
被告人は借金返済等のため、実父に金を無心したが拒絶されたことから、実父をナイロンひもで絞殺して金品を強取することを決意。さらに帰宅した実母についても強盗の障害になると考え同様に絞殺した。その後、両親の死体を山中に遺棄し、強取した通帳等を用いて現金264万円を詐取した。被告人は前科がなく、事件前は定職に就き真面目に生活しており、公判では深く反省し死罪を望む心情を吐露していた。
あてはめ
本件は実の両親を順次殺害した背倫理的かつ冷酷な犯行であり、結果も極めて重大である。しかし、殺害および強奪の決意は現場で突発的に生じたもので、事前の計画性は認められない。また、被告人には前科がなく、一時期を除き定職に就き社会生活を営んでいたこと、さらに自らの命で償いたいとする深い反省の情が認められる。これらの事情を総合すれば、死刑を選択しなかった原判決が著しく正義に反するほど不当に軽いとはいえない。
事件番号: 平成10(あ)413 / 裁判年月日: 平成11年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきである。本件は強盗殺人等の重罪であるが、犯行の計画性が不十分であることや被告人の更生可能性、前科のない経歴を考慮し、無期懲役を維持した原判決は相当である。 第1 …
結論
本件は死刑の選択も十分に考慮されるべき事案ではあるが、計画性の欠如や被告人の生活歴、反省の状況等の諸事情を鑑みれば、無期懲役とした原判決を維持することは正当である。
実務上の射程
死刑選択の可否が争われる事案における量刑判断の枠組み(永山基準)の具体的な適用例。特に、被害者が複数であっても「計画性の欠如」や「更生の可能性(前科なし・反省)」が死刑回避の有力な考慮要素となり得ることを示している。
事件番号: 平成1(あ)1354 / 裁判年月日: 平成8年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等の諸事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大で、やむを得ない場合に認められる。本件では、計画的かつ残虐な2件の強盗殺人等について、被告人の反省や前科がない点等の有利な事情を考慮して…
事件番号: 平成9(あ)719 / 裁判年月日: 平成11年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の重大事件において、共犯者の一方が主導的立場にあっても、他方の主体的な関与や役割が極めて重い場合には、両者の刑責に歴然とした差異を設けるべきとは限らない。そのため、既に無期懲役が確定した共犯者との均衡を考慮して被告人を無期懲役とした原判決の量刑は、著しく正義に反するとまではいえない。 第…
事件番号: 平成9(あ)479 / 裁判年月日: 平成11年12月10日 / 結論: 破棄差戻
一人暮らしの老女を冷酷かつ残虐な方法で殺害しその金品を強取した強盗殺人の犯行において、被告人が、共犯者との関係で主導的役割を果たしたこと、強盗殺人罪により無期懲役に処せられて服役しながら、その仮出獄中に再び右犯行に及んだこと等の諸点(判文参照)を総合すると、被告人の罪責は誠に重大であって、特に酌量すべき事情がない限り、…