死刑事件
判旨
死刑の選択に当たっては、犯行の動機、計画性、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科や犯行後の情状などの諸般の事情を慎重に考慮し、その責任が極めて重いと認められる場合にのみ許容される。
問題の所在(論点)
被告人に対する死刑の量刑が、諸般の事情(犯行の情状および被告人の属性・後天的事情)に照らして妥当か、あるいは重きに失して不当(刑訴法405条違反等)といえるか。
規範
死刑の選択が許容されるか否かは、①犯行の動機、②計画性、③殺害の方法等の態様、④殺害された被害者の数等の結果の重大性、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦被告人の年齢・前科、⑧犯行後の情状(隠蔽工作や悔悟の情等)を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、極刑の適用がやむを得ないと認められる場合に判断される。
重要事実
被告人は、働く能力がありながら無為徒食の生活を送り、安易に大金を得る目的で共犯者を誘い込み、強盗殺人を計画した。あらかじめ遺体遺棄用の穴を掘るなどの周到な準備をした上で、信頼関係のあった被害者を虚構の事実で誘い出し、殺害して金員を強取した。その後、遺体を発見困難な山中に隠匿した。被告人には前科があり、一方で現在は深く悔悟し公害防止装置の考案に励むなどの有利な事情も存在した。
あてはめ
本件では、利欲的な動機(①)に基づき、事前の穴掘り等の周到な準備(②)を経て、信頼を利用して誘い出し殺害するという非道な態様(③)が認められる。遺体を山中に隠匿する(⑧)など犯跡隠蔽も計画的である。遺族の打撃や社会的影響も甚大であり(⑤⑥)、前科等の経歴(⑦)も考慮すれば、悔悟の情や発明への努力という有利な事情(⑧)を考慮しても、被告人の刑事責任は誠に重い。したがって、第一審の死刑判決を維持した原判決の判断はやむを得ないものといえる。
結論
本件死刑判決は諸般の事情を慎重に考慮したものであり、量刑不当とは認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
いわゆる「永山基準」に先んじて、死刑選択の判断要素(動機、計画性、態様、情状等)を網羅的に列挙した点に実務上の意義がある。答案上は、量刑の妥当性を論じる際の具体的考慮要素の枠組みとして活用できる。
事件番号: 平成1(あ)1354 / 裁判年月日: 平成8年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等の諸事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大で、やむを得ない場合に認められる。本件では、計画的かつ残虐な2件の強盗殺人等について、被告人の反省や前科がない点等の有利な事情を考慮して…
事件番号: 昭和52(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和55年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑を判断するにあたっては、犯行の罪質、動機、計画性、態様、被害結果及び社会的影響の重大性などの諸要素を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大である場合には、死刑を選択することもやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は約10か月の間に、共謀のうえ保険金目的で知人Bを殺害したほか、単独で知人C…
事件番号: 平成10(あ)39 / 裁判年月日: 平成11年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人を含む重大な事案であっても、犯行の計画性の欠如や前科のない真面目な生活歴、反省悔悟の情といった被告人側の事情を総合考慮し、無期懲役を選択した一審判決を維持した二審の判断は、死刑を選択すべき事案であっても量刑不当として破棄されるべきものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人は借金返済等のた…
事件番号: 平成10(あ)413 / 裁判年月日: 平成11年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきである。本件は強盗殺人等の重罪であるが、犯行の計画性が不十分であることや被告人の更生可能性、前科のない経歴を考慮し、無期懲役を維持した原判決は相当である。 第1 …