強盗殺人、恐喝未遂等被告事件につき、無期懲役に処した第一審判決を維持した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされた事例
判旨
死刑の選択に当たっては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきである。本件は強盗殺人等の重罪であるが、犯行の計画性が不十分であることや被告人の更生可能性、前科のない経歴を考慮し、無期懲役を維持した原判決は相当である。
問題の所在(論点)
強盗殺人、死体遺棄、恐喝未遂(身の代金目的誘拐殺人等の実質を有する事案)において、被告人に対して死刑を選択すべきか否か、その判断枠組みと各事情の評価が問題となる。
規範
死刑の選択に当たっては、①犯行の性質、②動機、③態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状の諸点を確認し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地から死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に限って許される(永山基準の踏襲)。
重要事実
被告人は多額の負債を抱え、工場を訪れた銀行員(当時31歳)を背後から鉄製丸板等で殴打・絞殺して20数万円を強奪し、死体を遺棄した。さらに生存を装って銀行関係者に8000万円を要求する脅迫文を送付し、身の代金名下で現金を喝取しようとしたが未遂に終わった。第一審・控訴審ともに無期懲役を言い渡したため、検察官が量刑不当(死刑適用)を理由に上告した。
あてはめ
【肯定的事情】動機は自己中心的で酌量の余地がない。態様は重い鉄材で頭部を4回強打した上でロープで絞殺する等、残忍である。落ち度のない1名の命が奪われた結果は重大であり、遺族の処罰感情も厳しい。身の代金目的事件の実質を有し社会に与えた影響も大きい。 【否定的事情】犯行の計画性は「完全犯罪を画策し着々と準備した」とまでは言えず、不十分な点がある。負債の理由は遊興等ではなく経営難に起因する。前科はなく、直前まで実直な社会人として生活していた。
事件番号: 昭和59(あ)512 / 裁判年月日: 昭和63年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の適用は、犯罪の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情況等の諸要素を総合考慮し、その責任が極めて重大であって、罪刑均衡及び一般予防の見地からやむを得ないと認められる場合に許される。本件では、金銭目的の計画的かつ非道な犯行であること、遺体の損壊・…
結論
被告人の刑事責任は誠に重く、死刑の選択も十分考慮に値するが、前科のない経歴や犯行の計画性の程度等の諸般の事情を考慮すると、無期懲役を維持した原判決が著しく正義に反するとまでは認められない。上告棄却。
実務上の射程
死刑選択の判断枠組み(永山基準)の具体的な適用例として重要である。殺害された被害者が1名であっても、身の代金目的という悪質な実質を伴う場合には死刑の検討がなされるが、計画性の程度や前科の有無が最終的な回避事由になり得ることを示している。
事件番号: 平成10(あ)39 / 裁判年月日: 平成11年12月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人を含む重大な事案であっても、犯行の計画性の欠如や前科のない真面目な生活歴、反省悔悟の情といった被告人側の事情を総合考慮し、無期懲役を選択した一審判決を維持した二審の判断は、死刑を選択すべき事案であっても量刑不当として破棄されるべきものとはいえない。 第1 事案の概要:被告人は借金返済等のた…
事件番号: 平成8(あ)826 / 裁判年月日: 平成13年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑の選択がやむを得ないといえる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、交際相手への送金等の資金に窮し…
事件番号: 平成14(あ)317 / 裁判年月日: 平成18年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、2名の生命を奪った計画的かつ残忍な犯行において、被告人の役割が中心的であれば、酌むべき情状を考慮しても死刑を選択することはやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、(1)知人男性を車内で絞殺して死体をコンクリートで固めて遺棄し、(2)その2…