死刑事件(病院院長殺害事件)
判旨
死刑の適用は、犯罪の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情況等の諸要素を総合考慮し、その責任が極めて重大であって、罪刑均衡及び一般予防の見地からやむを得ないと認められる場合に許される。本件では、金銭目的の計画的かつ非道な犯行であること、遺体の損壊・遺棄という残虐な態様、重大な結果等に照らし、死刑の適用が是認された。
問題の所在(論点)
死刑の選択が許されるための判断基準、および本件のように被害者が1名である事案において死刑を適用することの是非(刑法9条、刑訴法411条の適用要件)。
規範
死刑の適用を決定するに当たっては、①罪質、②動機、③態様(殺害方法の執拗性・残虐性など)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情況等の諸要素を総合的に考慮しなければならない。これらの事情を併せ鑑み、その責任が誠に重大であって、罪刑均衡の観点からも、また一般予防の見地からも、死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、死刑を選択することが許される(いわゆる永山基準)。
重要事実
被告人両名は、一獲千金を狙い病院長を殺害して大金を強奪する計画を立てた。甘言で被害者を誘い出し、散弾銃やあいくちで脅迫して重傷を負わせ、現金約95万円を強奪した。被害者の必死の救護依頼を無視して長時間放置し、さらに2000万円の奪取を試みたが失敗。その後、瀕死の被害者の頸部を絞めて殺害し、死体をバラバラに解体して海中に投棄した。被告人らにはさしたる前科はなく、現在は反省の態度を示している。
あてはめ
本件は、金銭欲に基づく計画的かつ極めて悪質な犯行である(①②)。殺害態様も、重傷を負わせたまま長時間放置して苦しめた上、執拗に頸部を絞めて殺害し、さらに死体をバラバラにするという非情かつ残虐極まりないものである(③)。地域医療に貢献していた被害者の尊い生命を奪った結果は重大であり(④)、遺体の一部が未発見であることから遺族の被害感情も深刻である(⑤)。被告人両名は共同して犯行を遂行しており、責任に差はない。前科の欠如や反省の情といった被告人側の事情(⑦⑧⑨)を考慮しても、犯行の罪質・態様等の悪質性に鑑みれば、死刑の選択はやむを得ないといえる。
事件番号: 昭和55(あ)914 / 裁判年月日: 昭和62年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、やむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀し、保険金目的の妻殺害未遂事件、保険金詐取のための自…
結論
本件における死刑の科刑は、その責任の重大性に照らし、相当として是認される。
実務上の射程
死刑適用基準(永山基準)を再確認し、被害者が1名の事案であっても、犯行の計画性や残虐性が顕著であれば死刑が選択され得ることを示した重要な先例である。答案作成においては、基準となる諸要素を網羅的に挙げた上で、本件の特筆すべき事実(計画性、救護無視、死体解体)を各要素に当てはめて評価する。被害者数だけでなく、犯行態様の悪質性を強調する際の論理構成として有用である。
事件番号: 平成10(あ)413 / 裁判年月日: 平成11年12月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきである。本件は強盗殺人等の重罪であるが、犯行の計画性が不十分であることや被告人の更生可能性、前科のない経歴を考慮し、無期懲役を維持した原判決は相当である。 第1 …
事件番号: 昭和52(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和55年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑を判断するにあたっては、犯行の罪質、動機、計画性、態様、被害結果及び社会的影響の重大性などの諸要素を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大である場合には、死刑を選択することもやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は約10か月の間に、共謀のうえ保険金目的で知人Bを殺害したほか、単独で知人C…