死刑事件(工場主強殺死体遺棄事件)
判旨
死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、やむを得ない場合に許される。
問題の所在(論点)
死刑制度の合憲性、および死刑の量刑が許容されるための判断枠組みと、本件における死刑適用の是非が問題となった。
規範
死刑の選択に当たっては、①犯行の性質、②動機、③態様(特に殺害方法の残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状を総合的に考慮すべきである。これらを踏まえ、罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合に、死刑が選択される。
重要事実
被告人は、実兄と共謀し、保険金目的の妻殺害未遂事件、保険金詐取のための自傷狂言事件、および金員強取目的の強盗殺人・死体遺棄事件を起こした。強盗殺人においては、知人を偽計により誘い出し、野球バットで頭部を殴打した上、ロープで頸部を絞めて殺害し、現金1020万円を強取した。その後、遺体を地中に埋めて遺棄した。
あてはめ
本件各犯行は、保険金や多額の現金を目的としており動機に酌量の余地がない。犯行は計画的かつ組織的であり、特に強盗殺人における殺害方法は残虐である。1020万円という多額の強取および尊い生命を奪った結果は重大悲惨であり、遺族の被害感情も強く、社会的影響も無視できない。被告人の役割や前科等の諸事情を併せ考えると、第一審の死刑判決を維持した原判決の判断はやむを得ないものとして是認できる。
結論
事件番号: 昭和59(あ)512 / 裁判年月日: 昭和63年4月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の適用は、犯罪の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情況等の諸要素を総合考慮し、その責任が極めて重大であって、罪刑均衡及び一般予防の見地からやむを得ないと認められる場合に許される。本件では、金銭目的の計画的かつ非道な犯行であること、遺体の損壊・…
被告人による本件各犯行の罪責は極めて重大であり、死刑の科刑はやむを得ない。上告棄却。
実務上の射程
本判決(いわゆる名古屋アベック殺人事件等に関連する死刑確定判決の一つ)は、永山基準(最判昭58.7.8)を引用・踏襲する形で死刑選択の考慮要素を示している。実務上、死刑の当否が争われる事案では、本判決が挙げた要素に沿って具体的事実を抽出し、評価を行うことが必須となる。
事件番号: 昭和62(あ)562 / 裁判年月日: 平成5年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に当たらず合憲であり、死刑の適用は、罪質、動機、態様、結果の重大性等の諸情状を併せ考察し、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は共犯者と共謀し、保険金目的で2名を殺害(海中への突き落とし及び鉄棒での殴打…
事件番号: 平成14(あ)317 / 裁判年月日: 平成18年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、2名の生命を奪った計画的かつ残忍な犯行において、被告人の役割が中心的であれば、酌むべき情状を考慮しても死刑を選択することはやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、(1)知人男性を車内で絞殺して死体をコンクリートで固めて遺棄し、(2)その2…
事件番号: 昭和57(あ)842 / 裁判年月日: 昭和62年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状の諸点(永山基準)を総合考慮し、その罪責が極めて重大で、衡平の失当が認められない場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、約9か月の間に、未成年者誘拐、殺人、死体遺棄、強盗殺人、強…
事件番号: 昭和52(あ)1348 / 裁判年月日: 昭和55年4月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑を判断するにあたっては、犯行の罪質、動機、計画性、態様、被害結果及び社会的影響の重大性などの諸要素を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大である場合には、死刑を選択することもやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は約10か月の間に、共謀のうえ保険金目的で知人Bを殺害したほか、単独で知人C…