死刑事件(保険金殺人事件)(補足意見がある)
判旨
死刑制度は憲法36条が禁止する「残虐な刑罰」に当たらず合憲であり、死刑の適用は、罪質、動機、態様、結果の重大性等の諸情状を併せ考察し、罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に限られる。
問題の所在(論点)
死刑制度の憲法36条適合性、および複数の強盗殺人・殺人等の罪を犯した被告人に対し死刑を処することの是非(量刑の妥当性)。
規範
死刑の適用は、①犯行の罪質、②動機、③態様(殺害手段の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状等を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合に限定される。
重要事実
被告人は共犯者と共謀し、保険金目的で2名を殺害(海中への突き落とし及び鉄棒での殴打による交通事故偽装)して保険金を詐取したほか、所持金品強取および債務免脱目的でさらに1名を鉄棒で殴打して殺害し、死体を海中に遺棄した。被告人はこれら一連の犯行において主導的な立場で計画・遂行した主謀者であった。
あてはめ
被告人の行為は、3名の生命を奪った結果が極めて重大であり、保険金目的や債務免脱といった動機に酌量の余地はない。犯行は周到な準備に基づく計画的なもので、態様も冷酷・残虐である。被告人は主謀者として主導的役割を果たしており、遺族の処罰感情や社会への影響も大きい。反省の態度や前科がない等の事情を考慮しても、その罪責は誠に重く、罪刑の均衡を失しているとはいえない。
結論
死刑制度は憲法に違反せず、本件の諸事情に照らせば、被告人を死刑に処した第一審判決を維持した原判決は相当である。
事件番号: 平成8(あ)168 / 裁判年月日: 平成12年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条の「残虐な刑罰」に当たらず、複数の殺人・強盗殺人事件において、動機・態様・結果の重大性等の諸事情を総合考慮し、死刑の適用がやむを得ない場合には、これを是認することができる。 第1 事案の概要:被告人は約6年半の間に、2件の殺人と2件の強盗殺人等を犯した。具体的には、店舗店番の女…
実務上の射程
死刑の量刑基準(いわゆる永山基準)を再確認し、昭和23年大法廷判決以降の国際情勢の変化や誤判の可能性を踏まえてもなお、現時点の国民感情に照らし死刑は合憲であるとする判断枠組みを示すものである。答案上は、死刑選択の可否が問われる場面で、提示された9つの判断要素を具体的事実に即して検討する際に用いる。
事件番号: 昭和62(あ)246 / 裁判年月日: 平成4年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断においては、犯行の罪質、動機、計画性、態様、殺害方法の残忍性、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合的に考慮すべきであり、情状を酌量しても罪責が重大な場合には死刑が是認される。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済のため、同僚の妻Bから健康保険証を奪って金員を詐取しようと計…
事件番号: 昭和55(あ)914 / 裁判年月日: 昭和62年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、やむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀し、保険金目的の妻殺害未遂事件、保険金詐取のための自…
事件番号: 平成8(あ)482 / 裁判年月日: 平成12年4月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、極めて悪質かつ重大な結果を招いた強盗殺人等の事案において死刑を科すことは、諸般の事情を考慮しても是認される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀の上、一人暮らしの従弟(36歳)をビニールひもで緊縛・絞殺して権利証等を強取し、死体を海浜に遺棄した(…
事件番号: 平成16(あ)932 / 裁判年月日: 平成19年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が誠に重大であって、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、利得目的で2名の男性をそれぞれけん銃で頭部を…