死刑事件の量刑が維持された事例(木曽川殺人事件)
判旨
死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑の選択がやむを得ないといえる場合に限られる。
問題の所在(論点)
刑法11条、刑訴法411条。本件のように被害者が2名の強盗殺人事案において、死刑の選択が維持されるべきか、その判断枠組みと具体的適用の可否が問題となる。
規範
死刑の適用については、①犯行の性質(罪質)、②動機、③態様(殺害方法の残虐性等)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状を総合考慮する。これらの要素に照らし、その罪責が誠に重大であり、罪刑均衡の観点からも一般予防の観点からも極刑がやむを得ないと認められる場合に、死刑の選択が許容される(永山基準の踏襲)。
重要事実
被告人は、交際相手への送金等の資金に窮し、勤務先の同僚(26歳)を金属バットで殴打殺害して現金を強取し、死体に重石をつけて川に投棄した(第1事件)。その約2週間後、さらに金員を得るべく屋台店主(58歳)の車を物色中に発見されたため、同様に金属バットで頭部を殴打して現金を強取し、瀕死の被害者を川に投棄して溺死させた(第2事件)。被告人は隠蔽工作も行っていた。
あてはめ
まず、動機は金銭欲欲しさであり酌量すべき点はなく、殺害方法は金属バットによる殴打及び川への投棄という冷酷かつ非道な態様である。結果については、何ら落ち度のない被害者2名の生命を奪っており極めて重大である。また、死体遺棄や隠蔽工作を行っている点は犯情を悪化させており、遺族の被害感情も峻烈である。これらの罪質、動機、態様、結果等の諸要素を総合すれば、被告人の罪責は誠に重大であるといえる。被告人のために酌むべき事情(判決文からは詳細は不明)を考慮しても、死刑の科刑はやむを得ない。
結論
被告人の罪責は誠に重大であり、死刑を維持した原判決は相当である。上告棄却。
実務上の射程
被害者が2名の事案において死刑が維持された一例である。答案上は、死刑選択の可否が問われる場面で「永山基準」の具体的適用例として引用する。特に殺害態様の残虐性や、短期間での再犯といった事情を重視して「罪責の重大性」を肯定する際の論理構成の参考となる。
事件番号: 平成13(あ)1173 / 裁判年月日: 平成18年2月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条、98条2項に違反せず、殺害の態様が冷酷かつ残忍で結果が重大な強盗殺人等の事案においては、前科がない等の事情を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者らと共に、(1)会社事務所からの金庫窃盗および古美術店経営者宅での強盗を行い、(…
事件番号: 平成14(あ)317 / 裁判年月日: 平成18年2月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、2名の生命を奪った計画的かつ残忍な犯行において、被告人の役割が中心的であれば、酌むべき情状を考慮しても死刑を選択することはやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、(1)知人男性を車内で絞殺して死体をコンクリートで固めて遺棄し、(2)その2…
事件番号: 平成17(あ)1823 / 裁判年月日: 平成20年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきであり、本件の残虐性や強固な殺意に鑑みれば死刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、同棲相手の娘(12歳)と口論になり、憎しみを爆発させて包丁と紐で殺害。そ…