死刑の量刑が維持された事例(伊勢原の母子殺害事件)
判旨
死刑の量刑に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきであり、本件の残虐性や強固な殺意に鑑みれば死刑はやむを得ない。
問題の所在(論点)
死刑の量刑判断(永山基準)において、殺害された被害者が2名であり、かつ犯行の動機に酌量の余地がなく態様が残虐である場合に、死刑を維持した原判決が妥当か。刑訴法411条適用の有無が問題となる。
規範
死刑の適用にあたっては、刑事責任の重さを、①犯行の性質、②動機、③態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状を総合的に考慮して判断する。これら諸点に照らし、その罪責が極めて重大であって、罪刑均衡の見地からも一般予防の見地からも極刑がやむを得ないと認められる場合に適用される。
重要事実
被告人は、同棲相手の娘(12歳)と口論になり、憎しみを爆発させて包丁と紐で殺害。その後、発覚を免れる目的および逃走資金を得る目的で、同棲相手の帰宅を待ち伏せ、ハンマーで頭部を強打した上ペティナイフで心臓を突き刺して殺害し、現金等を強取した。被告人には強盗致傷の前科があった。
あてはめ
動機について、12歳の少女に対し身勝手な怒りから殺害に及び、さらに発覚阻止と利欲目的で同棲相手を殺害した点は、酌量の余地が全くない。態様についても、確定的殺意に基づき背後から襲撃するなど残忍かつ冷酷である。また、凶器の準備や帰宅時間の確認を行うなど計画性も認められる。2名の生命を奪った結果は極めて重大であり、前科があることや犯行後の工作といった情状も悪い。被告人が事実を認めている点を考慮しても、刑事責任は極めて重大である。
結論
被告人の刑事責任は極めて重大であり、第一審の死刑判決を維持した控訴審判決を是認せざるを得ない。上告棄却。
実務上の射程
死刑存置論を前提とし、いわゆる永山基準(最判昭58.7.8)の枠組みを再確認するものである。特に、被害者が2名である事案において、動機の身勝手さ、態様の残虐性、計画性が認められる場合には、死刑の選択が強く肯定される傾向を示す実務上の先例となる。
事件番号: 平成8(あ)826 / 裁判年月日: 平成13年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑の選択がやむを得ないといえる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、交際相手への送金等の資金に窮し…
事件番号: 平成13(あ)1401 / 裁判年月日: 平成17年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の極めて重大な罪を犯した被告人に対し、犯行の態様が冷酷かつ残忍で結果が甚大であり、前科関係や動機にも酌むべき点がない場合、不遇な成育歴等の事情を考慮しても、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、約半月の間にスナック等の女性経営者計4名を窒息死または失血死させて現金を強奪する…
事件番号: 平成20(あ)552 / 裁判年月日: 平成23年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判例(最判昭和58年7月8日等参照)に基づき、死刑選択の許容性を判断する基準を提示する。 第1 事案の概要:本件において、被告人ら3名は、以前から人命を軽視するような生活態度をとっていた。本件犯行は、犯行の隠蔽や逃走資金の確保といった身勝手な動機に基づくものである。犯行態様は極めて残虐かつ執拗であ…
事件番号: 平成19(あ)746 / 裁判年月日: 平成21年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人、強盗致死傷等に及んだ被告人に対し、殺害人数が2名に及ぶ等、その刑事責任は誠に重大であるが、共謀の範囲や関与の程度、犯行時未成年であったこと等の諸事情を考慮し、死刑の選択を回避した一審・控訴審の無期懲役判決を是認した。 第1 事案の概要:中国人留学生である被告人は、共謀者とホテル室内に誘い…