死刑の量刑が維持された事例(神奈川・兵庫の5人殺害事件)
判旨
死刑の選択に当たっては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であって、罪刑均衡および一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる。
問題の所在(論点)
死刑の量刑判断において考慮すべき要素(死刑選択の許容性)および、本件における死刑判決の是非。
規範
死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反しない。死刑の選択に際しては、①犯行の性質、②動機、③態様(特に殺意の強固さ、残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状等を総合的に考慮すべきである。これらを踏まえ、刑事責任が極めて重大であり、罪刑均衡の観点からも一般予防の観点からも死刑がやむを得ないと認められる場合には、死刑の選択が許容される。
重要事実
被告人は、約8か月の間に、(1)窃盗の共犯者、(2)交際を拒絶された女子高生とその母・妹の計3名、(3)離反しようとした別の共犯者の、合計5名を殺害した。いずれも鋭利な刃物を準備した計画的な犯行であり、身体枢要部をめった刺しにする残虐な態様であった。被告人は当時若年で罰金刑以外の前科はなく、公判では反省の弁を述べていた。
あてはめ
本件では、動機が短絡的かつ身勝手であり(②)、あらかじめ凶器を準備した計画的かつ残虐な殺害態様(③)により、5名もの命を奪った結果は極めて重大である(④)。わずか8か月で5名を殺害した点は安易に殺人に及ぶ傾向が顕著であり(①)、社会に与えた衝撃や遺族の被害感情も峻烈である(⑤⑥)。被告人が若年であり、前科がなく(⑧)、反省の弁を述べていること(⑨)等の有利な事情を考慮しても、その刑事責任は極めて重大といわざるを得ない。
事件番号: 平成15(あ)894 / 裁判年月日: 平成18年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の適用が許容される基準(いわゆる永山基準)の提示 第1 事案の概要:被告人は、拳銃を窃取して所持し、約1ヶ月の間に4名を射殺した。犯行は計画的かつ執拗であり、被害者らに落ち度はない。遺族の被害感情は峻烈であり、社会に与えた恐怖も甚大である。一方で、犯行当時、被告人は19歳の未成年であり、家庭環…
結論
被告人の刑事責任は極めて重大であり、第1審の死刑判決を維持した原判決は相当であって、死刑の科刑を是認せざるを得ない。
実務上の射程
いわゆる「永山基準」を再確認し、実務上、死刑選択の可否を判断する際の確立した枠組みとして機能する。答案作成においては、被害者数(本件は5名)のみならず、態様の残虐性や計画性を具体的事実から抽出して、刑事責任の重さを論証する際の指標となる。
事件番号: 平成12(あ)425 / 裁判年月日: 平成16年10月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑適用に当たっては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、計画性、殺意の強固さ、前科等の諸事情を総合考慮し、罪責が極めて重大であって、やむを得ない場合に認められる。 第1 事案の概要:被告人は、過去に自身の強姦致傷事件を通報した女性に逆恨みし、服役中から殺害を計画。出…
事件番号: 平成17(あ)1823 / 裁判年月日: 平成20年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきであり、本件の残虐性や強固な殺意に鑑みれば死刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、同棲相手の娘(12歳)と口論になり、憎しみを爆発させて包丁と紐で殺害。そ…
事件番号: 平成8(あ)826 / 裁判年月日: 平成13年9月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑の選択がやむを得ないといえる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人は、交際相手への送金等の資金に窮し…