死刑の量刑が維持された事例(前刑事件の被害女性に対する逆恨み殺人事件)
判旨
死刑適用に当たっては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、計画性、殺意の強固さ、前科等の諸事情を総合考慮し、罪責が極めて重大であって、やむを得ない場合に認められる。
問題の所在(論点)
死刑の適用要件(特に一人殺害の事案における死刑選択の可否)。
規範
死刑の選択に当たっては、①犯行の性質(動機・経緯)、②犯行の態様(冷酷性・残虐性)、③結果の重大性(殺害人数等)、④遺族の処罰感情、⑤社会的影響、⑥犯人の年齢、⑦前科、⑧犯行後の情状を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡および一般予防の観点からやむを得ない場合に限られる(永山基準の踏襲)。
重要事実
被告人は、過去に自身の強姦致傷事件を通報した女性に逆恨みし、服役中から殺害を計画。出所後、刃渡り約21cmの柳刃包丁を購入し、被害者の住居を突き止めて待ち伏せした上、胸部等を数回突き刺して殺害し、バッグを窃取した。被告人には過去に別の殺人事件での服役前科(懲役10年)があった。一審は無期懲役としたが、二審は死刑を言い渡した。
あてはめ
①動機は通報に対する逆恨みという「特異かつ理不尽・身勝手」なものであり、酌余の余地がない。②犯行態様は殺傷能力の高い刃物を用いた「冷酷かつ残虐」なものであり、高い計画性と強固な殺意が認められる。③結果は一人の生命を奪ったものであり極めて重大で、遺族の感情も峻烈である。⑦昭和52年にも殺人事件を起こした前科がある点は極めて重い。これらの事情に照らせば、反省の態度等の被告人の有利な事情を考慮しても、罪責は誠に重大である。
結論
被告人の罪責は誠に重大であり、死刑に処した原判断はやむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
被害者が一人の殺人事件であっても、計画性が高く、動機に酌量の余地がなく、かつ殺人前科がある等の悪質性が顕著な場合には、死刑の選択が肯定されることを示した事例。
事件番号: 平成17(あ)1823 / 裁判年月日: 平成20年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきであり、本件の残虐性や強固な殺意に鑑みれば死刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、同棲相手の娘(12歳)と口論になり、憎しみを爆発させて包丁と紐で殺害。そ…
事件番号: 昭和58(あ)581 / 裁判年月日: 平成2年4月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の態様、動機、殺害方法の執拗性・残虐性、被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状等、一切の事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重いと認められる場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、農作業中の主婦を強姦目的で襲い、抵抗されたため頸部を強…
事件番号: 平成15(あ)1087 / 裁判年月日: 平成18年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、身勝手な動機に基づく2件の残虐な殺人・強盗殺人について死刑を選択した原判決は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は内縁の妻が他男性と結婚したことに憤慨し、殺害予告後に彼女を鋭利な刃物で頸部を突き刺し殺害した。さらに約20日後、逃亡資金を得るためタク…
事件番号: 平成15(あ)894 / 裁判年月日: 平成18年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の適用が許容される基準(いわゆる永山基準)の提示 第1 事案の概要:被告人は、拳銃を窃取して所持し、約1ヶ月の間に4名を射殺した。犯行は計画的かつ執拗であり、被害者らに落ち度はない。遺族の被害感情は峻烈であり、社会に与えた恐怖も甚大である。一方で、犯行当時、被告人は19歳の未成年であり、家庭環…