死刑の量刑が維持された事例(名古屋,福岡の連続強盗殺人等事件)
判旨
死刑制度は憲法13条、31条、36条に違反せず、身勝手な動機に基づく2件の残虐な殺人・強盗殺人について死刑を選択した原判決は妥当である。
問題の所在(論点)
本件各犯行の態様及び被告人の属性等に照らし、死刑の選択が量刑不当として刑訴法411条により破棄されるべきか。
規範
死刑の量刑が妥当か否かは、犯行の罪質、動機、計画性、殺害方法の冷酷さ・残虐性、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の前科や犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、やむを得ない場合にのみ認められる。
重要事実
被告人は内縁の妻が他男性と結婚したことに憤慨し、殺害予告後に彼女を鋭利な刃物で頸部を突き刺し殺害した。さらに約20日後、逃亡資金を得るためタクシー運転手の頸部を刺身包丁で突き刺して殺害し、現金を強取した。被告人には凶悪事犯の前科はないが、窃盗罪等による服役を繰り返す身勝手で無軌道な生活を送っていた事実がある。
あてはめ
まず、20日足らずの間に2名の尊い命を奪った結果は甚だ重大である。動機は女性への逆恨みや金銭欲に過ぎず酌量の余地がない。頸部を突き刺し切り裂く殺害態様は計画的かつ冷酷・非情、残忍であり、罪質は極めて悪質である。遺族の処罰感情も厳しく社会への影響も大きい。凶悪前科がない等の被告人に有利な事情を考慮しても、その罪責は誠に重大である。
結論
被告人を死刑に処した第1審判決を維持した原判断は、やむを得ないものとして是認される。
事件番号: 平成17(あ)1823 / 裁判年月日: 平成20年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきであり、本件の残虐性や強固な殺意に鑑みれば死刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、同棲相手の娘(12歳)と口論になり、憎しみを爆発させて包丁と紐で殺害。そ…
実務上の射程
死刑制度自体の合憲性を再確認するとともに、いわゆる永山基準に沿った量刑判断の枠組みを示している。特に、短期間での再犯や殺害方法の残虐性が死刑選択の重要な考慮要素となることを示唆している。
事件番号: 平成5(あ)570 / 裁判年月日: 平成9年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条に違反せず、極めて悪質な罪質や残虐な犯行態様、重大な結果等の諸事情に照らし、死刑の科刑を是認した原判決は正当である。 第1 事案の概要:元警察官の被告人が、在職中の拳銃窃盗・強盗致傷事件等による服役を終え、仮出獄からわずか5日後に本件に及んだ。被告人は派出所の警察官を包丁で多数…
事件番号: 平成20(あ)552 / 裁判年月日: 平成23年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判例(最判昭和58年7月8日等参照)に基づき、死刑選択の許容性を判断する基準を提示する。 第1 事案の概要:本件において、被告人ら3名は、以前から人命を軽視するような生活態度をとっていた。本件犯行は、犯行の隠蔽や逃走資金の確保といった身勝手な動機に基づくものである。犯行態様は極めて残虐かつ執拗であ…
事件番号: 平成26(あ)959 / 裁判年月日: 平成28年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の命を奪った強盗殺人被告事件において、動機に酌むべき点はなく、犯行態様が非情かつ残酷である場合には、前科がなく反省の態度を示している等の事情を考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:1.被告人は、妻に嘘を重ねた結果、多額の金員が必要となり、民家に侵入して家人を殺害してでも金品…
事件番号: 平成6(あ)341 / 裁判年月日: 平成10年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条等に違反せず、強盗殺人未遂の事案であっても、計画性、残虐性、結果の重大性に鑑み、永山基準に照らして死刑の選択が許容される。 第1 事案の概要:被告人は、銀行強盗用の拳銃を奪う目的で、深夜の派出所を狙い、レンタカーやサバイバルナイフ、軍手等を用意する周到な準備をし…