死刑事件(練馬区中村橋派出所二警察官殺人事件)
判旨
死刑制度は憲法13条、31条、36条等に違反せず、強盗殺人未遂の事案であっても、計画性、残虐性、結果の重大性に鑑み、永山基準に照らして死刑の選択が許容される。
問題の所在(論点)
強盗殺人未遂罪(刑法240条後段、改正前)において、2名の生命を奪った事案に対し、被告人の年齢や前歴等の有利な事情を考慮してもなお、死刑を科することが量刑不当として憲法違反または刑訴法411条の破棄事由に当たるか。
規範
死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地から極刑がやむを得ないと認められる場合に許される(永山基準の枠組みを維持)。
重要事実
被告人は、銀行強盗用の拳銃を奪う目的で、深夜の派出所を狙い、レンタカーやサバイバルナイフ、軍手等を用意する周到な準備をした。その上で、勤務中の警察官2名の背後や胸部を執拗に突き刺して殺害し、拳銃を強取しようとしたが、抵抗に遭い未遂に終わった。被告人は犯行時、心神喪失等の状態にはなく、前科・前歴はなかった。
あてはめ
本件は拳銃強取という動機に酌量の余地がなく、偵察や凶器準備を伴う計画的な犯行である。態様もサバイバルナイフで連続して突き刺すなど執拗かつ残虐であり、2名の警察官の命を奪った結果は極めて重大である。被告人の生育歴、犯行時の年齢、前科がないこと等の有利な事情を十分考慮しても、罪質や計画性、残虐性に鑑みれば、その罪責は誠に重いといえる。
結論
事件番号: 平成19(あ)1317 / 裁判年月日: 平成20年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が適当であるとされるためには、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の観点からも、一般予防の観点からも…
被告人に死刑を科した第一審判決を維持した原判決の判断は、正当として是認できる。
実務上の射程
強盗殺人において、結果が未遂(目的物の強取に至らない)であっても、2名の死者が発生している場合には、永山基準における諸要素(特に計画性と残虐性)の評価次第で死刑判決が維持されることを示す。死刑制度自体の合憲性も再確認している。
事件番号: 昭和56(あ)1211 / 裁判年月日: 昭和62年10月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条にいう残虐な刑罰に当たらない。量刑に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科等を総合考慮し、その罪責が極めて重大な場合には死刑の選択も許容される。 第1 事案の概要:被告人は、多額の住宅資金等を得る目的で大物政治家の家族を誘拐する計画を…
事件番号: 平成5(あ)570 / 裁判年月日: 平成9年12月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法36条に違反せず、極めて悪質な罪質や残虐な犯行態様、重大な結果等の諸事情に照らし、死刑の科刑を是認した原判決は正当である。 第1 事案の概要:元警察官の被告人が、在職中の拳銃窃盗・強盗致傷事件等による服役を終え、仮出獄からわずか5日後に本件に及んだ。被告人は派出所の警察官を包丁で多数…
事件番号: 平成12(あ)1160 / 裁判年月日: 平成16年12月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、強盗殺人事件において主導的な役割を果たし、犯行態様が冷酷かつ結果が重大である場合、共犯者の刑罰との均衡を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人はバカラ賭博の借金返済に窮し、共犯者と共謀して貴金属販売業者の男性と交際相手の女性を殺害して…
事件番号: 平成10(あ)645 / 裁判年月日: 平成16年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法36条に違反しない。また、複数の強盗殺人等の事案において、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合考慮し、被告人の罪責が誠に重大である場合には、死刑の科刑は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、約2か月間にわたり計4件の強…