被殺者2名の殺人,強盗殺人等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例(静岡大学生強殺事件)
刑法9条,刑法199条,刑法240条,刑訴法411条2号
判旨
死刑の量刑が適当であるとされるためには、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の観点からも、一般予防の観点からも、極刑がやむを得ないと認められる場合でなければならない。
問題の所在(論点)
死刑選択の許容性および判断基準(いわゆる永山基準の定立)
規範
死刑の量刑を判断するに際しては、①犯行の性質、②動機、③態様(特に殺害手段の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状といった諸要素を総合的に考慮すべきである。これらの要素に照らし、罪刑の均衡および一般予防の両面から極刑がやむを得ないと認められる場合に、死刑の選択が許容される。
重要事実
被告人は、金品奪取を目的として被害者宅に侵入し、包丁様の刃物で被害者の頚部を切りつけるなどして殺害した(強盗殺人)。被害者は1名であるが、殺害の手段は執拗かつ残虐であり、被害者の無念や遺族の悲痛な感情は極めて深刻である。他方、被告人には、一定の反省の情が認められ、前科や不遇な生い立ちといった個人的な背景などの情状も認められる。
あてはめ
本件は強盗殺人という重大な犯罪であり、殺害態様の残虐性(③)や結果の重大性(④)、遺族の被害感情(⑤)に照らせば、その罪責は極めて重い。しかし、被害者が1名であること(④)、被告人に反省の情や酌むべき生い立ちなどの情状(⑨)が認められることを考慮すると、死刑を選択することが罪刑の均衡を失し、一般予防の観点からも絶対に不可避であるとまでは断定できない。したがって、無期懲役を選択した原判決の判断は維持されるべきである。
事件番号: 平成19(あ)946 / 裁判年月日: 平成22年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の罪を犯した被告人に対し、殺害が計画的でないことや自白・謝罪等の事情を考慮しても、犯行の経緯、動機、態様の残虐性、結果の重大性に鑑みれば、極めて重大な刑事責任を免れず、死刑の科刑は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済や逃亡中の生活費に窮し、短期間のうちに2件の強盗殺人および強…
結論
被告人を無期懲役とした原判決は相当であり、死刑を選択しなかったことが著しく正義に反するとは認められないため、検察官の上告を棄却する。
実務上の射程
被害者が1名である場合に死刑を選択するには、犯行態様の極端な残虐性や計画性など、他の要素において死刑を正当化する特段の事情が必要となることを示唆している。
事件番号: 昭和62(あ)879 / 裁判年月日: 平成4年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その責任が極めて重大であって、やむを得ない場合に限り許される。 第1 事案の概要:被告人は、前妻の実母を殺害した罪等により無期懲役に処せられ、仮出獄中であっ…
事件番号: 平成10(あ)645 / 裁判年月日: 平成16年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法36条に違反しない。また、複数の強盗殺人等の事案において、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合考慮し、被告人の罪責が誠に重大である場合には、死刑の科刑は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、約2か月間にわたり計4件の強…
事件番号: 平成6(あ)341 / 裁判年月日: 平成10年9月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、31条、36条等に違反せず、強盗殺人未遂の事案であっても、計画性、残虐性、結果の重大性に鑑み、永山基準に照らして死刑の選択が許容される。 第1 事案の概要:被告人は、銀行強盗用の拳銃を奪う目的で、深夜の派出所を狙い、レンタカーやサバイバルナイフ、軍手等を用意する周到な準備をし…
事件番号: 昭和63(あ)68 / 裁判年月日: 平成5年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、犯行の罪質、動機、態様、結果等の諸事情に照らして罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択はやむを得ないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は、離婚届を出して身を隠した妻の所在を隠匿したとして、妻の兄らに対して恨みを抱いた。被告人は恨みを晴らすとと…