死刑の量刑が維持された事例(岐阜,大阪の連続強盗殺人等事件)
判旨
強盗殺人等の罪を犯した被告人に対し、殺害が計画的でないことや自白・謝罪等の事情を考慮しても、犯行の経緯、動機、態様の残虐性、結果の重大性に鑑みれば、極めて重大な刑事責任を免れず、死刑の科刑は免れない。
問題の所在(論点)
死刑判決が正当化されるための判断基準と、殺害自体が計画的でない等の被告人に有利な事情(犯行後の情状)が、死刑回避の事由としてどの程度考慮されるべきか。
規範
死刑の適用にあたっては、犯行の罪質、動機、態様、特に殺害方法の執拗性・残虐性、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡、一般予防の見地からもやむを得ない場合に認められる(永山基準の枠組みを維持)。
重要事実
被告人は、借金返済や逃亡中の生活費に窮し、短期間のうちに2件の強盗殺人および強盗、窃盗等を敢行した。第1の犯行では発見された家人に馬乗りになり頸部を絞め付け窒息死させ、その2週間後の第2の犯行では、新聞勧誘員を装い侵入した上で、抵抗する家人の腹部や胸部を果物ナイフで多数回突き刺し、失血死させた。2名の生命が奪われ、遺族の処罰感情も峻烈であった。
あてはめ
まず、動機に酌むべき点はなく、2週間で2名の生命を奪った結果は重大である。態様も執拗で、頸部圧迫や刃物による多数回刺傷など残虐かつ冷酷である。他方で、殺害の計画性がないこと、犯行詳細を自供していること、謝罪の意思表明等の有利な事情も認められる。しかし、犯行の執拗さや結果の重大性に鑑みれば、これらの情状を十分考慮したとしても、被告人の刑事責任は極めて重大であり、死刑という究極の刑を選択せざるを得ない。
結論
事件番号: 平成19(あ)1317 / 裁判年月日: 平成20年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が適当であるとされるためには、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の観点からも、一般予防の観点からも…
本件における死刑の選択は、原判決の維持を含め是認せざるを得ず、憲法違反および刑事訴訟法411条等の適用も認められないため、上告を棄却する。
実務上の射程
死刑選択の可否が争われる事案における考慮要素の例示。殺害の計画性が欠けていても、犯行態様の残虐性や結果の重大性(殺害人数2名)、動機の卑劣さが勝る場合には死刑が維持される実務上の基準を確認するものである。
事件番号: 平成10(あ)645 / 裁判年月日: 平成16年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法36条に違反しない。また、複数の強盗殺人等の事案において、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合考慮し、被告人の罪責が誠に重大である場合には、死刑の科刑は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、約2か月間にわたり計4件の強…
事件番号: 平成19(あ)746 / 裁判年月日: 平成21年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人、強盗致死傷等に及んだ被告人に対し、殺害人数が2名に及ぶ等、その刑事責任は誠に重大であるが、共謀の範囲や関与の程度、犯行時未成年であったこと等の諸事情を考慮し、死刑の選択を回避した一審・控訴審の無期懲役判決を是認した。 第1 事案の概要:中国人留学生である被告人は、共謀者とホテル室内に誘い…
事件番号: 昭和62(あ)879 / 裁判年月日: 平成4年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その責任が極めて重大であって、やむを得ない場合に限り許される。 第1 事案の概要:被告人は、前妻の実母を殺害した罪等により無期懲役に処せられ、仮出獄中であっ…
事件番号: 平成18(あ)746 / 裁判年月日: 平成20年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等1件、強盗殺人未遂1件、現住建造物等放火1件、窃盗等14件を犯した事案において、犯行の態様が極めて執拗かつ残虐であり、1名死亡という結果も重大であるが、被告人が若年で前科がなく反省の情を示している等の事情を考慮し、死刑の選択を回避して無期懲役とした原判決を維持した。 第1 事案の概要:中…