強盗殺人1件,強盗致死・強盗致傷1件等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例
刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2号
判旨
強盗殺人、強盗致死傷等に及んだ被告人に対し、殺害人数が2名に及ぶ等、その刑事責任は誠に重大であるが、共謀の範囲や関与の程度、犯行時未成年であったこと等の諸事情を考慮し、死刑の選択を回避した一審・控訴審の無期懲役判決を是認した。
問題の所在(論点)
2名の死者を出した強盗殺人・強盗致死等の事案において、犯行態様の残虐性や結果の重大性を重視して死刑を選択すべきか、あるいは共謀の範囲や役割、年齢等の情状を重視して無期懲役にとどめるべきか、量刑の妥当性が問題となった。
規範
死刑の選択については、永山基準に基づき、犯行の罪質、動機、態様(特に殺傷の方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せて考察し、その責任が極めて重大であって、罪責ならびに一般予防の見地からも死刑がやむを得ないと認められる場合に限り、適用が許される。共謀事案においては、殺意の有無、共謀の範囲、役割の主従も重要な要素となる。
重要事実
中国人留学生である被告人は、共謀者とホテル室内に誘い出した女性から金銭を強取した上、口封じのためペティナイフで突き刺し殺害した(第1事件)。その約3週間後、他の共謀者らと資産家宅に侵入し、妻に重傷を負わせ、夫を刺身包丁で突き刺して死亡させた(第2事件)。被告人は第1事件では殺意を有していたが、第2事件では殺意や殺害の共謀はなく強盗致死傷の責任にとどまり、かつ第2事件の途中で逃走を呼びかけるなど消極的な言動を見せていた。犯行当時、被告人は未成年であった。
あてはめ
事件番号: 平成18(あ)746 / 裁判年月日: 平成20年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等1件、強盗殺人未遂1件、現住建造物等放火1件、窃盗等14件を犯した事案において、犯行の態様が極めて執拗かつ残虐であり、1名死亡という結果も重大であるが、被告人が若年で前科がなく反省の情を示している等の事情を考慮し、死刑の選択を回避して無期懲役とした原判決を維持した。 第1 事案の概要:中…
第1事件は計画的かつ殺害態様が執拗・残虐であり、第2事件も凶悪な組織的犯行であって、計2名を死亡させた結果は極めて重大である。遺族の処罰感情も厳しく、死刑の選択も考慮される。しかし、第2事件において被告人は殺害の共謀がなく殺意も認められないこと、同事件では主犯ではなく途中で逃走を促すなど消極的であったこと、詳細な供述により反省を示していること、および犯行当時未成年であったことを総合すれば、無期懲役とした原判決が著しく正義に反するとは認められない。
結論
本件上告を棄却する。被告人を無期懲役に処した一審判決を維持した控訴審判決は相当である。
実務上の射程
被害者が2名以上の場合であっても、殺意の有無や共謀の内容、犯行時の年齢(少年)、関与の程度(主従関係)といった個別事情によっては、死刑回避の余地があることを示す事例。答案では、永山基準の各要素に事実をあてはめる際のバランス感覚(特に殺意の欠如や役割の軽重の評価)として引用できる。
事件番号: 平成19(あ)946 / 裁判年月日: 平成22年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の罪を犯した被告人に対し、殺害が計画的でないことや自白・謝罪等の事情を考慮しても、犯行の経緯、動機、態様の残虐性、結果の重大性に鑑みれば、極めて重大な刑事責任を免れず、死刑の科刑は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済や逃亡中の生活費に窮し、短期間のうちに2件の強盗殺人および強…
事件番号: 平成17(あ)1823 / 裁判年月日: 平成20年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきであり、本件の残虐性や強固な殺意に鑑みれば死刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、同棲相手の娘(12歳)と口論になり、憎しみを爆発させて包丁と紐で殺害。そ…
事件番号: 平成10(あ)645 / 裁判年月日: 平成16年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法36条に違反しない。また、複数の強盗殺人等の事案において、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合考慮し、被告人の罪責が誠に重大である場合には、死刑の科刑は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、約2か月間にわたり計4件の強…
事件番号: 平成19(あ)1317 / 裁判年月日: 平成20年9月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑が適当であるとされるためには、犯行の性質、動機、態様、特に殺害の手段方法の執拗性・残虐性、結果の重大性、特に殺害された被害者の数、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の観点からも、一般予防の観点からも…