強盗殺人1件,被害者を深刻な認知症に至らしめた強盗殺人未遂1件等の事案につき,無期懲役の量刑が維持された事例
刑法9条,刑法240条,刑法243条,刑訴法411条2号
判旨
強盗殺人等1件、強盗殺人未遂1件、現住建造物等放火1件、窃盗等14件を犯した事案において、犯行の態様が極めて執拗かつ残虐であり、1名死亡という結果も重大であるが、被告人が若年で前科がなく反省の情を示している等の事情を考慮し、死刑の選択を回避して無期懲役とした原判決を維持した。
問題の所在(論点)
殺害された被害者が1名である強盗殺人等の重大事案において、死刑を選択すべきか、あるいは無期懲役とするのが相当かという量刑の判断基準が問題となる。
規範
死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性、残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であって、罪責と均衡の観点からも一般予防の観点からも極めてやむを得ない場合に限って許される(永山基準)。
重要事実
中国人留学生である被告人が、金品奪取の目的で民家に侵入し、発見されたため包丁等で被害者の頭部や胸腹部を多数回切りつけ、突き刺して1名を殺害。別の民家でも同様に住居に侵入し、被害者の頭部を園芸用火山岩等で多数回殴打して重傷を負わせた(後に重度の認知症を発症)。その他、放火1件、窃盗等14件を敢行。被告人は若年で前科はなく、捜査段階から自白して反省の情を示していた。
あてはめ
犯行態様はあらかじめ凶器を準備しており偶発的とは言えず、執拗かつ残虐である。また、1名を死亡させ、1名に深刻な認知症を伴う重傷を負わせた結果は極めて重大であり、死刑の選択も考慮されるべき刑事責任がある。しかし、被告人が若年であり、本邦での前科がなく真面目に学業に励んでいたこと、自白により反省悔悟の情を示していることを考慮すると、極刑に処するほかないとまでは断定できない。
事件番号: 平成19(あ)746 / 裁判年月日: 平成21年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人、強盗致死傷等に及んだ被告人に対し、殺害人数が2名に及ぶ等、その刑事責任は誠に重大であるが、共謀の範囲や関与の程度、犯行時未成年であったこと等の諸事情を考慮し、死刑の選択を回避した一審・控訴審の無期懲役判決を是認した。 第1 事案の概要:中国人留学生である被告人は、共謀者とホテル室内に誘い…
結論
被告人を無期懲役に処した第1審判決を維持した原判決の量刑は、これを破棄しなければ著しく正義に反するとまでは認められず、相当である。
実務上の射程
被害者が1名の場合でも、強盗殺人という重大犯罪であり犯行態様が残虐であれば死刑の選択肢は検討されるが、被告人の年齢や前科、更生の可能性といった被告人側の事情を重視し、極刑回避の余地を認めた事例として活用できる。刑事実務における死刑選択の慎重な姿勢を示すものである。
事件番号: 平成10(あ)645 / 裁判年月日: 平成16年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度およびその執行方法は憲法36条に違反しない。また、複数の強盗殺人等の事案において、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響等を総合考慮し、被告人の罪責が誠に重大である場合には、死刑の科刑は妥当である。 第1 事案の概要:被告人は共謀の上、約2か月間にわたり計4件の強…
事件番号: 平成19(あ)946 / 裁判年月日: 平成22年1月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等の罪を犯した被告人に対し、殺害が計画的でないことや自白・謝罪等の事情を考慮しても、犯行の経緯、動機、態様の残虐性、結果の重大性に鑑みれば、極めて重大な刑事責任を免れず、死刑の科刑は免れない。 第1 事案の概要:被告人は、借金返済や逃亡中の生活費に窮し、短期間のうちに2件の強盗殺人および強…
事件番号: 平成13(あ)1286 / 裁判年月日: 平成17年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情況等を総合的に考慮し、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。本件のような主導的立場で敢行された3名の強盗殺人事犯等において、刑事責任は極めて重く、死刑の維持は妥当である。 第…
事件番号: 昭和63(あ)68 / 裁判年月日: 平成5年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、犯行の罪質、動機、態様、結果等の諸事情に照らして罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択はやむを得ないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は、離婚届を出して身を隠した妻の所在を隠匿したとして、妻の兄らに対して恨みを抱いた。被告人は恨みを晴らすとと…