死刑事件(芦屋の一家殺傷事件)
判旨
死刑の量刑判断において、犯行の動機、態様、結果の重大性、特に非のない二人の貴重な人命(うち一名は児童)を奪った残虐な殺害態様を考慮し、被告人の刑責が極めて重い場合には、死刑を選択した原判決の科刑を是認できる。
問題の所在(論点)
死刑の選択が許容されるための判断枠組み、および本件のような残虐な態様による2名殺害事案における死刑選択の妥当性(刑訴法411条適用の成否)。
規範
死刑を選択するにあたっては、犯行の動機、態様、結果の重大性(特に奪われた人命の数)、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢・前科、犯行後の情状等、記録に現れた諸般の事情を総合的に考慮し、その刑責が極めて重大であって罪刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合に認められる。
重要事実
被告人は、わずか8歳の児童を含む2名の貴重な人命を奪う殺人事件を起こした。被害者らには何ら落ち度(責められるべき事情)はなく、その殺害の態様は残虐非道を極めるものであった。第一審および控訴審は死刑を選択し、被告人側が量刑不当等を理由に上告した事案である。
あてはめ
まず、結果の重大性について、本件は2名の生命を奪っており、うち1名は抵抗力の弱い8歳の児童である。次に、犯行態様は「残虐非道」と評価されるほど悪質である。さらに、被害者側には一切の非がなく、命を奪われるべき事情は存在しない。これらの事情を総合すると、被告人の刑責は「まことに重い」といえ、死刑を選択した原判決が著しく正義に反する(刑訴法411条2号)とは認められない。
結論
本件各犯行の情状を考慮すると、被告人の刑責は極めて重く、死刑を言い渡した原判決の科刑はやむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
いわゆる永山基準(最判昭58.7.8)に先立ち、死刑選択の考慮要素を端的に示した判例である。答案上は、生命侵害の数、態様の残虐性、被害者の属性(児童等)を重視して刑責の重さを評価する際の参考となる。特に「残虐非道」な態様や「落ち度のない被害者」という要素は、死刑相当性を基礎付ける強力な事実評価として活用できる。
事件番号: 昭和62(あ)498 / 裁判年月日: 平成2年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、罪刑均衡及び一般予防の観点からやむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は米軍基地内で窃取した拳銃を使用し、約1か月間に東京、京…
事件番号: 昭和55(あ)914 / 裁判年月日: 昭和62年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、やむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、実兄と共謀し、保険金目的の妻殺害未遂事件、保険金詐取のための自…