判旨
死刑の選択については、犯行の計画性の有無、前科の有無、被害回復の状況といった被告人に有利な事情を考慮してもなお、犯行の動機、態様、結果の重大性等の諸般の事情に照らし、その責任が極めて重いと認められる場合には、これを是認することができる。
問題の所在(論点)
死刑の量刑選択における考慮要素。特に、計画性の欠如や前科の不在、一定の被害回復がなされている場合であっても、犯行の態様や結果の重大性に鑑みて死刑を処することが許容されるか。
規範
死刑の量刑判断にあたっては、犯行の計画性の有無、殺害の方法(残忍性)、殺害された人数(結果の重大性)、犯行の動機、被告人の性格、遺族の処罰感情、および犯行後の情状(前科の有無や被害回復の状況)といった諸般の事情を総合考慮し、被告人の刑事責任が極めて重大でやむを得ないといえるか否かによって判断する。
重要事実
被告人は、全く落ち度のない青年2人を、自身の邪推による恨みから殺害した。被告人には前科がなく、本件は計画的な犯行ではなかった。また、被告人の父が300万円を支払って遺族への慰謝に努めているという事情があった。一方で、殺害方法は残忍であり、一時に2人の息子を失った遺族の悲痛は甚大であった。
あてはめ
被告人には、非計画的犯行であること、前科がないこと、父による300万円の支払という有利な事情がある。しかし、動機は邪推による恨みであり、殺害方法は残忍で被告人の性格の非道さが現れている。さらに、前途ある2人の命を奪ったという結果は極めて重く、遺族の悲痛も深い。これらの諸事情を総合すれば、有利な事情を考慮してもなお、被告人の責任は誠に重いといえる。
結論
被告人に有利な事情を考慮しても、犯行の残忍性や結果の重大性に鑑みれば、死刑に処した第一審判決を維持した原判決は正当であり、死刑の選択はやむを得ない。
実務上の射程
死刑選択の判断枠組みを示した初期の判例の一つ。後の永山基準(最判昭58.7.8)ほど詳細な項目列挙はないが、犯行態様、結果の重大性、遺族の感情、社会的影響等を総合考慮する実務の基礎となる考え方を示している。答案上は、量刑の妥当性を論じる際の一般的考慮要素の提示として活用できる。
事件番号: 昭和60(あ)215 / 裁判年月日: 平成2年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極刑を選択するに当たっては、犯行の態様が残虐であること、殺害された被害者の数等の結果が重大であること、及び遺族の被害感情が深刻であること等を総合的に考慮し、その刑責が誠に重大であると認められる場合には死刑の選択も許容される。 第1 事案の概要:被告人は金策のために知人A方を訪れたが、話のもつれから…
事件番号: 昭和55(あ)493 / 裁判年月日: 昭和60年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が極めて重大でやむを得ない場合に認められる。本件では、無抵抗な女性3名を殺害した残虐な犯行態様や動機の身勝手さを重視し、死刑が是認された。 第1 事案の概要…