死刑事件(一家三人殺害事件)
判旨
極刑を選択するに当たっては、犯行の態様が残虐であること、殺害された被害者の数等の結果が重大であること、及び遺族の被害感情が深刻であること等を総合的に考慮し、その刑責が誠に重大であると認められる場合には死刑の選択も許容される。
問題の所在(論点)
死刑判決が維持された第一審及び原審の量刑が、刑訴法411条2号(刑の量刑が著しく不当)に該当し、破棄すべきものか。具体的には、3名殺害という結果および犯行の残虐性が死刑を選択するに足りる重大な刑責といえるかが問題となった。
規範
死刑の選択が許されるか否かは、犯行の罪質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑均衡の見地からも一般予防の見地からもやむを得ないといえる場合に限って許される。
重要事実
被告人は金策のために知人A方を訪れたが、話のもつれから激情。持参した鋭利な刃物を用いて、A(53歳)のみならず、入浴中であった妻B(49歳)及び二階にいた長女C(17歳)を次々と刺して殺害した。犯行態様は極めて残虐であり、一家3名の命を奪うという重大な結果を生じさせた事案である。
あてはめ
本件では、激情に駆られた末とはいえ、鋭利な刃物で無抵抗な入浴中の女性や逃げ場のない二階にいた長女を含む3名を次々に殺害しており、その犯行態様は「すこぶる残虐」と評価できる。また、一家の構成員3名を死に至らしめた結果は「重大」であり、突如として家族を失った遺族の被害感情も「極めて深刻」である。これらの事情を総合すれば、被告人の刑事責任は誠に重大といえる。
結論
本件における死刑の選択は、その罪責の重大さに照らし、やむを得ないものとして是認できる。したがって、原判決の量刑は不当ではなく、上告を棄却する。
実務上の射程
永山基準(最判昭58.7.8)を踏襲しつつ、被害者が3名にのぼる殺害事件において、態様の残虐性と結果の重大性を重視して死刑を是認した事例として、量刑論の起案における主要な考慮要素の引用に用いる。
事件番号: 平成6(あ)1024 / 裁判年月日: 平成10年12月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】半年余りの間に3名の命を奪った結果は極めて重大であり、犯行態様が冷酷、残忍かつ非情であって、遺族の被害感情も極めて厳しい等の事情がある場合には、被告人に有利な事情を考慮しても死刑の科刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共に借金トラブルからBを殺害・遺棄し、その後、共犯者の父Dか…
事件番号: 昭和55(あ)493 / 裁判年月日: 昭和60年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が極めて重大でやむを得ない場合に認められる。本件では、無抵抗な女性3名を殺害した残虐な犯行態様や動機の身勝手さを重視し、死刑が是認された。 第1 事案の概要…