死刑事件(佐賀県鳥栖市の一家3人殺人事件)
判旨
死刑の選択に際しては、犯行の動機、態様、結果等の諸事情を総合的に評価すべきであり、被告人の精神的障害等の酌むべき事情を考慮してもなお極刑を免れない場合には、死刑の科刑は正当として是認される。
問題の所在(論点)
死刑の選択(刑法11条、199条)が適当とされる判断基準、および被告人が有する精神的障害(妄想型人格障害等)が死刑回避の決定的な事情となるか。
規範
死刑の選択が許容されるか否かは、犯行の罪質、動機、態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状等、諸般の事情を併せ考察し、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の観点からも一般予防の観点からも極刑がやむを得ないと認められる場合に判断される(永山判決の枠組みを前提とする)。
重要事実
被告人は、自宅の金具を近隣の長男が盗んだと邪推し、対応した父親の態度に激高。出刃包丁で父親の胸部を力一杯突き刺して殺害した。さらに制止しようとした母親の胸部や頸部を突き刺し、逃げ回る中学生の長男に対しても胸腹部や背部を滅多突きにして殺害した。被告人は妄想型人格障害を伴う軽度の精神薄弱者であり、本件は衝動的な犯行であった。他方、前科はなく、遺族との和解も成立していた。
あてはめ
まず、動機は根拠のない邪推であり、殺害態様は力一杯突き刺し、逃げる子供を滅多突きにするなど極めて冷酷かつ執拗である。結果についても、一家3名を殺害した点は誠に重大である。被告人が精神的障害を有し、衝動的な犯行であったこと、前科がなく遺族と和解していること等の有利な事情を十分に考慮しても、犯行の罪質や結果の重大性に照らせば、死刑の科刑はやむを得ない。したがって、責任能力が肯定される以上、極刑を選択した原判断は正当といえる。
結論
被告人に精神的障害や遺族との和解等の有利な事情があるとしても、殺害態様の残虐性や3名殺害という結果の重大性に鑑みれば、死刑の科刑は是認される。
実務上の射程
死刑選択の可否が争われる事案において、精神障害等の被告人側の情状(主観的事由)と、犯行態様・結果の重大性(客観的事由)の比較衡量を示す際に活用する。特に、一家殺傷などの多人数殺害事案では、個人的事情よりも客観的な罪責の重大性が重視される傾向を示す好例である。
事件番号: 昭和60(あ)215 / 裁判年月日: 平成2年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極刑を選択するに当たっては、犯行の態様が残虐であること、殺害された被害者の数等の結果が重大であること、及び遺族の被害感情が深刻であること等を総合的に考慮し、その刑責が誠に重大であると認められる場合には死刑の選択も許容される。 第1 事案の概要:被告人は金策のために知人A方を訪れたが、話のもつれから…
事件番号: 平成17(あ)1823 / 裁判年月日: 平成20年6月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑に際しては、犯行の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状を総合考慮すべきであり、本件の残虐性や強固な殺意に鑑みれば死刑はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、同棲相手の娘(12歳)と口論になり、憎しみを爆発させて包丁と紐で殺害。そ…