死刑事件(女性三名刺殺事件)
判旨
死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、罪責が極めて重大でやむを得ない場合に認められる。本件では、無抵抗な女性3名を殺害した残虐な犯行態様や動機の身勝手さを重視し、死刑が是認された。
問題の所在(論点)
死刑制度の合憲性、および複数の殺害行為が行われた事案において、被告人の生育歴や心身の疲労といった情状を考慮しても、死刑を選択することが社会通念上相当といえるか(量刑の適正)。
規範
死刑の適用は、刑法11条、199条に基づき、以下の要素を総合的に考慮して判断される。すなわち、①犯行の罪質、②動機、③態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状等である。これらを踏まえ、その罪責が極めて重大であって、罪罰の一衡の観点からも極刑がやむを得ないと認められる場合に、死刑の選択が許容される(永山基準の枠組みを維持)。
重要事実
被告人は、借財を抱え無軌道な女性関係を続けていた末に、交際女性の連れ出しを妨げた知人、女性の妹、および連れ出されるのを拒んだ当該女性の計3名を、携行していた包丁で次々と突き刺して殺害した。被告人には不幸な生育歴があり、犯行当時は逃避行等により心身が疲労していた状況にあった。
あてはめ
まず、死刑制度自体は憲法13条、14条、31条、36条等に違反しない。量刑について検討すると、①動機は生活の行き詰まりに伴う身勝手なものであり酌むべき点がない。②態様は無抵抗な女性3名を次々と刺殺する残虐なものである。③結果は3名殺害という極めて重大かつ悲惨なものである。④遺族の被害感情も深刻である。これに対し、被告人に有利な事情として、心身の疲労や不幸な生育歴が認められるが、これらを考慮しても、罪責の重大性に照らせば死刑を回避すべき決定的な理由とはならず、極刑の選択はやむを得ない。
事件番号: 平成6(あ)1195 / 裁判年月日: 平成11年2月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断においては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、及び被告人の前科や犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であってやむを得ない場合に限り許容される。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者による他言を恐れて当該共犯者をダルマジャッキで頭部を数回強…
結論
本件殺人の罪責は誠に重大であり、第一審の死刑判決を維持した原判決は正当として、上告を棄却した。
実務上の射程
死刑の量刑判断において、被害者数が複数(本件では3名)であることは極めて重要な加重要素となる。また、被告人の「生育歴」や「犯行時の疲労」といった一般的・個人的な情状がある場合でも、犯行態様の残虐性や結果の重大性がそれを大きく上回る場合には、死刑が正当化されることを示した。答案上は、死刑選択の許容性を論じる際の総合考慮の具体的あてはめモデルとして活用できる。
事件番号: 昭和60(あ)215 / 裁判年月日: 平成2年10月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】極刑を選択するに当たっては、犯行の態様が残虐であること、殺害された被害者の数等の結果が重大であること、及び遺族の被害感情が深刻であること等を総合的に考慮し、その刑責が誠に重大であると認められる場合には死刑の選択も許容される。 第1 事案の概要:被告人は金策のために知人A方を訪れたが、話のもつれから…
事件番号: 昭和62(あ)498 / 裁判年月日: 平成2年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、罪刑均衡及び一般予防の観点からやむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は米軍基地内で窃取した拳銃を使用し、約1か月間に東京、京…
事件番号: 昭和63(あ)352 / 裁判年月日: 平成6年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、とりわけ殺害された被害者数の多さや結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、罪責が極めて重大であって罪刑の均衡、一般予防の観点からもやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和…
事件番号: 平成18(あ)417 / 裁判年月日: 平成20年2月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の適用は、事案の性質、犯行の態様・結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡の観点からも、一般予防の観点からも死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に限って許される。 第1 事案の概要:被告人は、暴力団…