被殺者2名の強盗殺人等被告事件につき,多数意見では被告人2名を無期懲役に処した第1審判決を維持した控訴審判決を破棄しなければ著しく正義に反するとは認められないとされたが,1名の被告人について,2裁判官による量刑不当との反対意見が付された事例
刑法9条,刑法240条,刑訴法411条2号
判旨
死刑の適用は、事案の性質、犯行の態様・結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡の観点からも、一般予防の観点からも死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に限って許される。
問題の所在(論点)
死刑選択の許容性と、その判断にあたって考慮すべき要素(特に、殺害された被害者の数とその他の情状の重み付け)が問題となった。
規範
死刑の選択に当たっては、①犯行の性質、②動機、③態様(殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(殺害された被害者数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状(反省の程度等)を総合考慮する。これらを照らし合わせ、その罪責が極めて重大であり、刑の均衡および一般予防の見地からやむを得ない場合にのみ死刑が許容される(いわゆる永山基準)。
重要事実
被告人は、暴力団組織の幹部として行動を共にしていた者(共犯者)らと共謀し、短期間のうちに拳銃を用いて計4名を殺害した。被告人は以前から拳銃を不法に所持しており、犯行は組織内の規律維持や面目維持といった利己的かつ反社会的な動機に基づいていた。殺害態様も極めて冷酷であり、計画的な準備を経て実行されたものである。被告人は前科がなく、自首して犯行を認めているが、法廷での供述は自己弁護的で、真摯な悔悟の念に欠けていた。
あてはめ
事件番号: 平成20(あ)254 / 裁判年月日: 平成23年10月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯行態様が冷酷かつ非情で残忍であり、強盗殺人や口封じといった動機に酌量の余地がない場合、殺害された被害者の数(被告人Aが3名、被告人Bが4名)や犯行の社会的影響等の諸事情を考慮すれば、被告人らに反省の態度が見られる等の情状を十分考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:1. 被告人…
まず、4名を殺害したという結果(④)は極めて重大であり、犯行態様(③)も冷酷である。動機(②)についても暴力団内の抗争等に関連する身勝手なものであり、社会的影響(⑥)も大きい。弁護側は、被告人が自首したことや反省の態度、前科がないこと(⑧、⑨)を強調し、死刑回避を主張する。しかし、自首後の供述内容は表面的なものに留まっており、被害遺族の峻烈な被害感情(⑤)を和らげるには至っていない。殺害された人数が多人数にのぼる本件のような重大事案においては、自首や前科の欠如といった一般的情状を最大限考慮したとしても、罪責の重大性に鑑みれば死刑の選択はやむを得ない。
結論
被告人の罪責は極めて重大であり、原審の死刑判決は維持されるべきである(上告棄却)。
実務上の射程
死刑適用を検討する際の標準的な判断枠組み(9要素)として、後の刑事実務において確立した指針となった。特に「殺害された被害者数」は極めて重視される要素の一つである。
事件番号: 平成15(あ)894 / 裁判年月日: 平成18年9月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の適用が許容される基準(いわゆる永山基準)の提示 第1 事案の概要:被告人は、拳銃を窃取して所持し、約1ヶ月の間に4名を射殺した。犯行は計画的かつ執拗であり、被害者らに落ち度はない。遺族の被害感情は峻烈であり、社会に与えた恐怖も甚大である。一方で、犯行当時、被告人は19歳の未成年であり、家庭環…
事件番号: 平成18(あ)2339 / 裁判年月日: 平成20年4月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が暴力団幹部5名を射殺した事案において、死刑の適用が妥当であると判断された事例(いわゆる永山基準の枠組みを踏襲)。 第1 事案の概要:暴力団幹部である被告人は、住宅街にある事務所において、所持していた拳銃で同組織の幹部5名を次々と射殺した。動機について被告人は、被害者らによる自らの殺害計画が…
事件番号: 平成17(あ)1901 / 裁判年月日: 平成21年6月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度と憲法13条、31条、36条の適合性、及び死刑選択の基準(いわゆる永山基準)。 第1 事案の概要:被告人は当時19歳の少年であったが、計4名を相次いで射殺(連続ピストル射撃事件)。犯行態様は至近距離から確実な殺意をもって行われた冷酷かつ非情なものである。動機に酌むべき点はなく、4名もの尊い…
事件番号: 平成20(あ)552 / 裁判年月日: 平成23年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】判例(最判昭和58年7月8日等参照)に基づき、死刑選択の許容性を判断する基準を提示する。 第1 事案の概要:本件において、被告人ら3名は、以前から人命を軽視するような生活態度をとっていた。本件犯行は、犯行の隠蔽や逃走資金の確保といった身勝手な動機に基づくものである。犯行態様は極めて残虐かつ執拗であ…