死刑事件(8人強盗殺人事件) 死刑の主文2個の第一審判決を維持した原判決が是認された事例
判旨
死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、とりわけ殺害された被害者数の多さや結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、罪責が極めて重大であって罪刑の均衡、一般予防の観点からもやむを得ないと認められる場合に許される。
問題の所在(論点)
死刑制度の憲法適合性、および多数の殺人・強盗殺人等の重大事犯を重ねた被告人に対し、死刑を適用することの妥当性(量刑判断の枠組み)。
規範
死刑制度は憲法31条、36条等に違反しない。死刑の選択にあたっては、①犯行の罪質、②動機、③態様(殺害方法の執拗性・残虐性など)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状を併せ考察すべきである。これらを総合評価した結果、その罪責が誠に重大であって、罪刑の均衡の観点からも、一般予防の観点からも、死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、死刑を選択することができる(いわゆる永山基準の踏襲)。
重要事実
被告人は、昭和47年から55年にかけて、虚栄心や物欲を満たすため、女性5名を絞殺して金品を奪い、さらに散弾銃を用いて2名を射殺する等、計7名を殺害した(第一の事案)。その後、窃盗罪による執行猶予期間中であったにもかかわらず、昭和57年から58年にかけて、警察官を襲撃して拳銃を奪い、さらに1名を射殺し、他1名に対しても至近距離から発砲して殺害しようとした(第二の事案)。第一の事案は自首により発覚したが、全体で計8人の命を奪う極めて凶悪な連続犯行であった。
あてはめ
本件では、合計8人の尊い生命が奪われており、結果が極めて重大である(④)。犯行態様は計画的かつ冷酷・残忍であり(③)、動機も利欲目的で酌むべき点がない(②)。また、重大事犯による執行猶予期間中に更なる凶悪犯行を累行しており、人命尊重の念が全く欠如している(⑧、⑨)。社会に与えた不安も甚大である(⑥)。被告人が自首し、現在は悔悟の情を示しているという有利な事情(⑨)を考慮しても、その罪責は誠に重大である。したがって、罪刑の均衡および一般予防の観点から、死刑の選択はやむを得ない。
事件番号: 昭和62(あ)498 / 裁判年月日: 平成2年4月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その責任が極めて重大で、罪刑均衡及び一般予防の観点からやむを得ない場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は米軍基地内で窃取した拳銃を使用し、約1か月間に東京、京…
結論
本件の罪責は極めて重大であり、死刑に処した第一審判決を維持した原判決は、やむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
本判決は、いわゆる「永山基準(最判昭58.7.8)」を再確認したものである。実務上、死刑の選択が争点となる事案では、上記9つの要素を網羅的に検討することが必須となる。特に「殺害された被害者数」は実務上重視される要素であるが、本判決のように、自首や悔悟といった有利な事情があっても、結果の重大性や犯行態様の悪質さがそれを大きく上回る場合には死刑が肯定されるという、総合評価の具体例として活用できる。
事件番号: 昭和57(あ)932 / 裁判年月日: 昭和59年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の犯罪歴や性格、生育環境等の諸事情を総合的に考慮し、その科刑がやむを得ないと認められる場合にはこれを肯定できる。 第1 事案の概要:被告人は金品を強取するため、就寝中の一家5名全員の殺害を企図。ハンマーで強打し、あ…
事件番号: 平成13(あ)1286 / 裁判年月日: 平成17年9月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯罪の性質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情況等を総合的に考慮し、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。本件のような主導的立場で敢行された3名の強盗殺人事犯等において、刑事責任は極めて重く、死刑の維持は妥当である。 第…
事件番号: 昭和63(あ)68 / 裁判年月日: 平成5年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、犯行の罪質、動機、態様、結果等の諸事情に照らして罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択はやむを得ないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は、離婚届を出して身を隠した妻の所在を隠匿したとして、妻の兄らに対して恨みを抱いた。被告人は恨みを晴らすとと…
事件番号: 昭和62(あ)879 / 裁判年月日: 平成4年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その責任が極めて重大であって、やむを得ない場合に限り許される。 第1 事案の概要:被告人は、前妻の実母を殺害した罪等により無期懲役に処せられ、仮出獄中であっ…