死刑事件(広域連続強盗殺人事件)
判旨
死刑の選択に当たっては、犯行の態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の犯罪歴や性格、生育環境等の諸事情を総合的に考慮し、その科刑がやむを得ないと認められる場合にはこれを肯定できる。
問題の所在(論点)
強盗殺人被告事件において、一家殺害を企図し2名を殺害した事案につき、死刑を選択した第一審判決を維持した原判決が、刑罰の均衡を失し、著しく不当(刑訴法411条2号)といえるか。
規範
死刑の選択が許容されるか否かの判断においては、①犯行の罪質、態様(残虐性等)、②結果の重大性(殺害された人数等)、③被害感情、④社会的影響、⑤被告人の前科、⑥犯行後の情状(更生の可能性等)などの諸要素を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑均衡の観点からも一般予防の観点からも死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に、これを適用すべきである(いわゆる永山基準の枠組みを実質的に踏襲)。
重要事実
被告人は金品を強取するため、就寝中の一家5名全員の殺害を企図。ハンマーで強打し、あるいは頸部を締めるなどの暴行を加え、女児2名を殺害し、父親に瀕死の重傷を負わせた。被告人には犯罪歴があり、反社会的な性格も認められたが、一方で劣悪な生育環境などの酌むべき事情も存在した。
あてはめ
まず、態様について、無抵抗の就寝中の家族をハンマーで次々と強打する点は極めて残虐かつ凶悪である。次に、結果について、2名の尊い命を奪い、1名に重傷を負わせたことは極めて重大かつ悲惨であり、遺族の深刻な被害感情や社会的影響も無視できない。被告人の反社会的性格や犯罪歴に照らせば、刑事責任は重い。被告人の生育環境など考慮すべき有利な事情を最大限考慮したとしても、本件の犯行の残虐性や結果の重大性に鑑みれば、死刑の科刑はやむを得ない。したがって、量刑不当として破棄すべき事由は認められない。
事件番号: 昭和62(あ)192 / 裁判年月日: 平成2年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、結果、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その刑の選択がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、強盗殺人罪により無期懲役に処せられ、仮出獄中の身であった。被告人は、居直り強…
結論
本件における死刑の科刑は是認できる。原判決を維持し、上告を棄却する。
実務上の射程
死刑選択の判断枠組みを示した「永山判決(最判昭58.7.8)」を実務的に踏襲し、具体的なあてはめを行った事例。答案上は、殺害人数が1名ないし2名の場合であっても、態様の残虐性や計画性が高い場合には、総合考慮により死刑が選択され得ることを示す際の参照例となる。
事件番号: 昭和62(あ)879 / 裁判年月日: 平成4年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その責任が極めて重大であって、やむを得ない場合に限り許される。 第1 事案の概要:被告人は、前妻の実母を殺害した罪等により無期懲役に処せられ、仮出獄中であっ…
事件番号: 昭和63(あ)68 / 裁判年月日: 平成5年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、犯行の罪質、動機、態様、結果等の諸事情に照らして罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択はやむを得ないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は、離婚届を出して身を隠した妻の所在を隠匿したとして、妻の兄らに対して恨みを抱いた。被告人は恨みを晴らすとと…
事件番号: 昭和63(あ)352 / 裁判年月日: 平成6年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、犯行の罪質、動機、態様、とりわけ殺害された被害者数の多さや結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せ考察し、罪責が極めて重大であって罪刑の均衡、一般予防の観点からもやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、昭和…