死刑事件(兵庫県の母子ら3人殺害事件)
判旨
死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重く、やむを得ない場合に認められる。自首や反省等の被告人に有利な事情を考慮しても、犯行の計画性や残虐性が著しい場合には死刑判決を是認できる。
問題の所在(論点)
強盗殺人等の罪責を負う被告人に対し、自首や反省、生育歴等の有利な事情を考慮した上でも、極刑である死刑を選択することが社会通念上相当といえるか。
規範
死刑の科刑が許容されるか否かの判断においては、①犯行の罪質、②動機、③犯行態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦犯人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状(自首・反省の有無等)といった諸要素を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪罰の均衡及び一般予防の見地からやむを得ないといえる場合に、死刑の選択が許容される(永山基準の踏襲)。
重要事実
被告人は、出所からわずか3日後、金員強奪目的で刺身包丁を準備して民家に押し入り、主婦から現金を強取した上、3歳の長男及び当該主婦の頸部を引き切るなどして殺害した。さらに数日後、再度強盗殺人目的で果物ナイフを購入し、別の民家で主婦を殺害したが、金員は発見できず未遂に終わった。被告人は自首しており、公判では反省の態度を示していたが、短期間に3名を殺害(うち1名強盗殺人未遂)した事案である。
あてはめ
本件では、まず、出所直後に強盗殺人を企て凶器を準備しており、計画性が高い(②⑧)。次に、幼い子供を含む被害者の頸部を引き切り、多数回突き刺すという態様は極めて執拗かつ残虐である(③)。結果についても、短期間に3名の尊い命を奪っており極めて重大である(④)。遺族の被害感情や社会に与えた影響も甚大といえる(⑤⑥)。被告人の自首、反省、生育歴といった有利な事情(⑨)を十分に考慮したとしても、前述の犯行の悪質性・重大性を覆すには至らず、その罪責は誠に重いと評価せざるを得ない。
事件番号: 昭和62(あ)192 / 裁判年月日: 平成2年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、結果、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その刑の選択がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、強盗殺人罪により無期懲役に処せられ、仮出獄中の身であった。被告人は、居直り強…
結論
被告人の罪責は誠に重く、死刑を科した第一審及び控訴審の判断は、当裁判所もこれを是認せざるを得ない。本件上告を棄却する。
実務上の射程
死刑選択の是非が争われる事案における実務上の指針(永山基準)を再確認するものである。答案作成上は、被告人に有利な事情(自首、反省、生育歴)を「考慮した上で」なお、犯行の計画性、残虐性、結果の重大性がそれらを凌駕するという論理構成を採る際のモデルとなる。
事件番号: 昭和46(あ)88 / 裁判年月日: 昭和48年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、特に殺傷の手段方法の残虐性、結果の重大性、社会的影響、被告人の経歴、犯行後の情状等の諸般の事情を慎重に考慮し、その責任が極めて重いと認められる場合には、やむを得ないものとして許容される。 第1 事案の概要:被告人は遊興費を入手する目的で、2回にわたり周…
事件番号: 平成27(あ)1585 / 裁判年月日: 平成30年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断において、殺害の計画性の欠如や前科がない等の有利な事情を考慮しても、犯行態様の残虐性、結果の重大性、動機に酌量の余地がない場合には、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗の罰金刑の資金を得るため、金品窃取目的でA方に侵入。物色中に発見されたため強取を決意し、A(57歳…
事件番号: 昭和63(あ)68 / 裁判年月日: 平成5年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、犯行の罪質、動機、態様、結果等の諸事情に照らして罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択はやむを得ないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は、離婚届を出して身を隠した妻の所在を隠匿したとして、妻の兄らに対して恨みを抱いた。被告人は恨みを晴らすとと…
事件番号: 昭和57(あ)932 / 裁判年月日: 昭和59年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の犯罪歴や性格、生育環境等の諸事情を総合的に考慮し、その科刑がやむを得ないと認められる場合にはこれを肯定できる。 第1 事案の概要:被告人は金品を強取するため、就寝中の一家5名全員の殺害を企図。ハンマーで強打し、あ…