死刑事件
判旨
死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、特に殺傷の手段方法の残虐性、結果の重大性、社会的影響、被告人の経歴、犯行後の情状等の諸般の事情を慎重に考慮し、その責任が極めて重いと認められる場合には、やむを得ないものとして許容される。
問題の所在(論点)
死刑判決が正当化されるための量刑判断の枠組み、および本件における死刑選択の適否が問題となる。
規範
死刑の量刑判断にあたっては、①犯行の罪質、②動機、③態様(特に殺害方法の残虐性)、④結果の重大性、⑤社会的影響、⑥被告人の素質・生育歴・前科等の経歴、⑦犯行後の情状などの諸般の事情を総合的に考慮し、被告人の責任が誠に重く、刑の均衡および一般予防の観点からやむを得ないといえる場合にのみ選択されるべきである。
重要事実
被告人は遊興費を入手する目的で、2回にわたり周到な準備の上、金庫破りを行った。その際、熟睡中で無抵抗であった20歳の宿直員に対し、所持していた鉈で頸部を叩き切って殺害するという残虐な手段を用いた。被告人には相当数の窃盗前科があり、素質や生育歴に同情すべき点はあったものの、犯行の結果および社会的影響は極めて重大であった。
あてはめ
本件では、利欲目的という動機に酌量の余地はなく、周到な準備に基づく計画性が認められる。殺害態様については、無抵抗な被害者の頸部を鉈で切断するという極めて残虐な手法が採られており、結果も生命を奪うという取り返しのつかないものである。被告人の窃盗前科等の経歴を含め、その刑事責任を検討すると、生育歴等の個人的事情を考慮してもなお、罪責は誠に重いといえる。
結論
原判決が諸般の事情を慎重に考慮して被告人を死刑に処したのは、やむを得ないものとして是認できる。
実務上の射程
死刑適用の基準を示したいわゆる「永山基準」に先んじて、死刑選択の際の考慮要素を網羅的に挙げた事例である。司法試験においては、量刑の妥当性や死刑制度の憲法適合性を論じる際の具体的あてはめの参考となる。
事件番号: 昭和62(あ)192 / 裁判年月日: 平成2年12月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、結果、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その刑の選択がやむを得ないと認められる場合に許される。 第1 事案の概要:被告人は、強盗殺人罪により無期懲役に処せられ、仮出獄中の身であった。被告人は、居直り強…
事件番号: 昭和42(あ)1375 / 裁判年月日: 昭和43年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許されるのは、犯行の動機、態様、結果、社会的影響、被告人の態度等の諸般の情状を照らし、極刑を科すことがやむを得ないと認められる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪行為(詳細は判決文からは不明)を行い、第一審および控訴審において極刑(死刑)の判決を受けた。被告人側は事実…
事件番号: 昭和57(あ)842 / 裁判年月日: 昭和62年12月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に際しては、罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状の諸点(永山基準)を総合考慮し、その罪責が極めて重大で、衡平の失当が認められない場合に許容される。 第1 事案の概要:被告人は、約9か月の間に、未成年者誘拐、殺人、死体遺棄、強盗殺人、強…
事件番号: 昭和57(あ)932 / 裁判年月日: 昭和59年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の犯罪歴や性格、生育環境等の諸事情を総合的に考慮し、その科刑がやむを得ないと認められる場合にはこれを肯定できる。 第1 事案の概要:被告人は金品を強取するため、就寝中の一家5名全員の殺害を企図。ハンマーで強打し、あ…