死刑事件(直方の女性殺害事件)
判旨
死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、結果、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その刑の選択がやむを得ないと認められる場合に許される。
問題の所在(論点)
死刑の選択が許容されるための判断枠組み、及び無期懲役の仮出獄中に強盗殺人等の再犯に及んだ事例における死刑適用の妥当性。
規範
死刑の選択に当たっては、①罪質、②動機、③態様(特に殺害方法の執拗性・残虐性)、④結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、⑤遺族の被害感情、⑥社会的影響、⑦被告人の年齢、⑧前科、⑨犯行後の情状を総合考慮すべきである。これらを踏まえ、罪責が極めて重大であって、罪刑の均衡の見地からも、一般予防の見地からも、死刑の選択がやむを得ないと認められる場合には、死刑の選択も許容される(いわゆる永山基準の踏襲)。
重要事実
被告人は、強盗殺人罪により無期懲役に処せられ、仮出獄中の身であった。被告人は、居直り強盗の際、被害女性が助けを求めたため、逮捕を恐れて同女を絞殺した。さらにその約二か月後、空き巣目的で侵入した際、逮捕を免れるために所携の登山ナイフで追跡者の頸部を突き刺し、重傷を負わせた。被告人の生い立ちなど酌むべき事情も存在していた。
あてはめ
本件では、犯行の罪質が強盗殺人であり、動機も逮捕を免れるためという自己中心的なものである。態様も絞殺やナイフによる刺突という危険なものであり、結果も一人の生命を奪い他の一人に重傷を負わせるという重大なものである。特に、被告人が強盗殺人罪による無期懲役の仮出獄中であったという前科・情状は極めて重く、遺族の被害感情等も併せ考慮すれば、被告人の生い立ち等の情状を考慮しても、死刑の科刑はやむを得ない。罪刑の均衡、一般予防の両見地から、死刑の選択は正当として是認できる。
事件番号: 昭和62(あ)879 / 裁判年月日: 平成4年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の前科、犯行後の情状などの諸要素を総合考慮し、その責任が極めて重大であって、やむを得ない場合に限り許される。 第1 事案の概要:被告人は、前妻の実母を殺害した罪等により無期懲役に処せられ、仮出獄中であっ…
結論
被告人の上告を棄却し、第一審の死刑判決を維持した原判決は正当である。
実務上の射程
被害者が1人の場合でも、強盗殺人等の重大な前科(特に無期懲役の仮出獄中)がある場合には、犯行態様や動機の悪質性と相まって、死刑が選択される可能性が高いことを示している。答案上は、死刑選択の考慮要素を列挙する際の規範として用いる。
事件番号: 昭和57(あ)932 / 裁判年月日: 昭和59年9月13日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、被告人の犯罪歴や性格、生育環境等の諸事情を総合的に考慮し、その科刑がやむを得ないと認められる場合にはこれを肯定できる。 第1 事案の概要:被告人は金品を強取するため、就寝中の一家5名全員の殺害を企図。ハンマーで強打し、あ…
事件番号: 昭和46(あ)88 / 裁判年月日: 昭和48年3月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択については、犯行の罪質、動機、態様、特に殺傷の手段方法の残虐性、結果の重大性、社会的影響、被告人の経歴、犯行後の情状等の諸般の事情を慎重に考慮し、その責任が極めて重いと認められる場合には、やむを得ないものとして許容される。 第1 事案の概要:被告人は遊興費を入手する目的で、2回にわたり周…
事件番号: 昭和42(あ)1375 / 裁判年月日: 昭和43年4月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択が許されるのは、犯行の動機、態様、結果、社会的影響、被告人の態度等の諸般の情状を照らし、極刑を科すことがやむを得ないと認められる場合に限られる。 第1 事案の概要:被告人が特定の犯罪行為(詳細は判決文からは不明)を行い、第一審および控訴審において極刑(死刑)の判決を受けた。被告人側は事実…