死刑の量刑が維持された事例(愛知一家強盗殺傷事件)
刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
判旨
死刑の量刑判断において、殺害の計画性の欠如や前科がない等の有利な事情を考慮しても、犯行態様の残虐性、結果の重大性、動機に酌量の余地がない場合には、死刑の選択は免れない。
問題の所在(論点)
死刑選択の是非(量刑の不当)。具体的には、計画性の欠如、前科の欠如、謝罪の意思という被告人に有利な事情がある場合に、2名の殺害及び1名の殺害未遂という結果に対して死刑を処することが許されるか。
規範
死刑の選択に当たっては、永山基準(最判昭58.7.8)を踏まえ、犯行の罪質、動機、態様(特に殺意の強固さや残虐性)、結果の重大性(殺害人数等)、遺族の処罰感情、社会的影響、被告人の年齢、前科、犯行後の情状を総合的に考慮し、その責任が極めて重大であって、罪刑均衡及び一般予防の観点からやむを得ない場合に認められる。
重要事実
被告人は窃盗の罰金刑の資金を得るため、金品窃取目的でA方に侵入。物色中に発見されたため強取を決意し、A(57歳)をモンキーレンチで約20回殴打し殺害、二男B(26歳)を拘束した上で包丁で刺殺した。さらに数時間後に帰宅した三男Cに対しても背後から頸部を刺し、重傷を負わせた。被告人には前科はなく、侵入当初は殺害を計画していなかったが、事後の謝罪意思の表明はあるものの、遺族の処罰感情は峻烈であった。
あてはめ
犯行態様は、凶器を手に取り直し殺害行為を思いとどまる機会があったにもかかわらず、執拗かつ無慈悲な暴行を加えており、強固な殺意に基づく残虐なものである。動機は自己中心的な利欲目的であり酌量の余地はない。2名の尊い生命が奪われた結果は極めて重大であり、遺族の処罰感情も当然に厳しい。これらの事情を総合すれば、計画性の欠如や前科がない等の有利な事情を最大限に考慮しても、被告人の刑事責任は極めて重大といえる。
結論
被告人を死刑に処した一審判決を維持した原判決は、当裁判所もこれを是認せざるを得ず、死刑の選択は正当である。
実務上の射程
強盗殺人において、当初から殺害を計画していなかった場合(非計画的犯行)であっても、殺害人数が複数に及び、かつその態様が執拗・残虐である場合には、他の有利な情状を凌駕して死刑が選択され得ることを示す実務上の指針となる。
事件番号: 平成25(あ)1127 / 裁判年月日: 平成27年2月3日 / 結論: 棄却
殺人等の罪により懲役20年の刑に服した前科がある被告人が被害者1名を殺害した住居侵入,強盗殺人の事案において,本件犯行とは関連が薄い前記前科があることを過度に重視して死刑に処した裁判員裁判による第1審判決の量刑判断が合理的ではなく,被告人を死刑に処すべき具体的,説得的な根拠を見いだし難いと判断して同判決を破棄し無期懲役…
事件番号: 平成30(あ)318 / 裁判年月日: 令和2年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人のパーソナリティ障害の特性が、殺害行為の態様等に影響を及ぼしていたとしても、強盗の決意や現場への滞在、殺害の実行自体が被告人の意思に基づくものである以上、2名の命を奪った結果の重大性に鑑みれば、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、生活苦から強盗を決意し、2度にわたり深夜の…
事件番号: 平成26(あ)959 / 裁判年月日: 平成28年3月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】2名の命を奪った強盗殺人被告事件において、動機に酌むべき点はなく、犯行態様が非情かつ残酷である場合には、前科がなく反省の態度を示している等の事情を考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:1.被告人は、妻に嘘を重ねた結果、多額の金員が必要となり、民家に侵入して家人を殺害してでも金品…
事件番号: 平成28(あ)1889 / 裁判年月日: 令和元年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭目的で強盗殺人と強盗殺人未遂を繰り返した事案において、周到な準備に基づく強固な殺意、結果の重大性、被害者遺族の峻烈な処罰感情に鑑みれば、若年であったこと等の事情を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、(1)強盗目的でA方に侵入し、妻Bを絞殺後に帰宅…