死刑の量刑が維持された事例(愛知の夫婦強盗殺人等事件)
刑法11条,刑法(平成16年法律第156号による改正前のもの)240条後段,刑訴法411条2号
判旨
金銭目的で強盗殺人と強盗殺人未遂を繰り返した事案において、周到な準備に基づく強固な殺意、結果の重大性、被害者遺族の峻烈な処罰感情に鑑みれば、若年であったこと等の事情を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
強盗殺人2名、強盗殺人未遂1名の罪責を負う被告人に対し、犯行時の若年性や前科のないこと、謝罪の意を表明していること等の情状を考慮した上で、死刑を選択することが社会正義の見地から許容されるか。
規範
死刑の選択に当たっては、犯行の性質、動機、態様(特に殺意の強固さ)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)、遺族の被害感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を併せて考察し、罪責が極めて重大で、永山基準(最判昭58.7.8)に照らし、極刑がやむを得ないと認められる場合に許される。
重要事実
被告人は、共犯者と共謀の上、(1)強盗目的でA方に侵入し、妻Bを絞殺後に帰宅したAも同様に絞殺して現金を強取し、(2)その約8年後、女性一人暮らしのC方に点検を装い侵入し、Cの頸部を絞めて殺害しようとしたが負傷させるにとどまった。被告人は、(1)で主導的役割を果たし、(2)でも主体的に関与。Aの殺害実行行為の一部も担っていた。犯行当時、被告人は23歳(事案1)であり前科はなかったが、金銭目的の計画的犯行であった。
あてはめ
本件は強盗の計画性が高く、在宅中の民家を襲うなど態様は冷酷である。結果として2名の尊い命が奪われ、1名の命が危険にさらされた事実は極めて重大である。被告人は(1)を主導し(2)にも積極的に関与しており、主体的責任は重い。遺族の処罰感情も峻烈である。これに対し、犯行時の若年性や前科がないこと、謝罪の弁等の有利な事情を最大限考慮しても、人命軽視の態度は顕著であり、刑事責任は極めて重大といわざるを得ない。
事件番号: 平成27(あ)1585 / 裁判年月日: 平成30年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断において、殺害の計画性の欠如や前科がない等の有利な事情を考慮しても、犯行態様の残虐性、結果の重大性、動機に酌量の余地がない場合には、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗の罰金刑の資金を得るため、金品窃取目的でA方に侵入。物色中に発見されたため強取を決意し、A(57歳…
結論
被告人を死刑に処した第一審判決を維持した原判決の判断は、当裁判所もこれを是認せざるを得ず、死刑の科刑は相当である。
実務上の射程
複数の殺人・強盗殺人事案において、死刑選択の可否を検討する際の標準的な判断枠組みを示す。特に、犯行時の若年性や前科の欠如という有利な情状があっても、計画性、残虐性、結果の重大性がそれを上回る場合には極刑が維持される実務上の指針となる。
事件番号: 平成19(あ)97 / 裁判年月日: 平成22年10月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人が強盗の目的で二人の被害者の住宅に侵入し、それぞれに対し頸部を圧迫するなどの暴行を加えて殺害し、現金を強取した事案において、死刑の選択がやむを得ないとされた事例。 第1 事案の概要:被告人は、金員を強取する目的で二度にわたり住宅に侵入した。第一の事件では、被害者の頸部を両手で強く絞めて殺害し…
事件番号: 平成18(あ)746 / 裁判年月日: 平成20年11月4日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】強盗殺人等1件、強盗殺人未遂1件、現住建造物等放火1件、窃盗等14件を犯した事案において、犯行の態様が極めて執拗かつ残虐であり、1名死亡という結果も重大であるが、被告人が若年で前科がなく反省の情を示している等の事情を考慮し、死刑の選択を回避して無期懲役とした原判決を維持した。 第1 事案の概要:中…
事件番号: 平成18(あ)2178 / 裁判年月日: 平成21年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑を判断するに際しては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、被害者の遺族の感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状の各事情を総合的に考慮し、その罪責が誠に重大であって、極刑もやむを得ないと認められる場合には死刑を選択することができる。 第1 事案の概要:被告人は、パチンコ店への侵…