死刑の量刑が維持された事例(前橋市連続強盗殺人事件)
刑法11条,刑法240条後段,刑訴法411条2号
判旨
被告人のパーソナリティ障害の特性が、殺害行為の態様等に影響を及ぼしていたとしても、強盗の決意や現場への滞在、殺害の実行自体が被告人の意思に基づくものである以上、2名の命を奪った結果の重大性に鑑みれば、死刑の選択はやむを得ない。
問題の所在(論点)
強盗殺人等の罪における量刑において、被告人の精神障害(パーソナリティ障害)の特性が犯行の態様に影響を与えている場合、死刑の選択を回避すべき決定的な事情となるか。
規範
死刑の選択については、犯行の性質、動機、態様、特に殺意の強固さや残虐性、結果の重大性、遺族の処罰感情、社会的影響、犯人の年齢、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が極めて重大であって、罪刑均衡の見地からも一般予防の見地からも死刑の選択がやむを得ないと認められる場合に許される(永山基準)。また、被告人の精神障害等の特性が犯行に影響している場合であっても、それが犯行の根幹部分にどの程度関与しているか、被告人の自由な意思がどの程度残されていたかを慎重に評価すべきである。
重要事実
被告人は、生活苦から強盗を決意し、2度にわたり深夜の高齢者宅に侵入。1件目では93歳の被害者をバールや包丁で殺害して現金を強取し、2件目では80歳の妻を殺害しようとして負傷させ、さらに81歳の夫を殺害した。被告人には軽度の広汎性発達障害およびパーソナリティ障害があり、金目の中のが見つからず数時間現場に留まり続けた点や、殺害態様の執拗さにその特性が現れていた。一方で、侵入や強盗の決意、殺害の実行自体は被告人の意思によるものであった。
あてはめ
本件各犯行は、高齢者を狙い凶器を準備した上で、強固な殺意に基づき執拗かつ残虐な態様で行われており、2名の尊い命を奪った結果は極めて重大である。被告人の障害の特性は、現場に長時間留まったことや殺害態様の執拗さには反映されているものの、強盗の決意や深夜の民家侵入、殺害の実行そのものは、障害の影響によるものとはいえず、被告人の自由な意思に基づくものである。特に、1件目の犯行で命を奪ったことを認識しながら同様の2件目に及んだ点は、人命軽視の態度が顕著であり、強い非難を免れない。遺族の処罰感情も峻烈であり、若年であることや前科がない等の事情を考慮しても、刑事責任は極めて重大といえる。
事件番号: 平成27(あ)1585 / 裁判年月日: 平成30年9月6日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の量刑判断において、殺害の計画性の欠如や前科がない等の有利な事情を考慮しても、犯行態様の残虐性、結果の重大性、動機に酌量の余地がない場合には、死刑の選択は免れない。 第1 事案の概要:被告人は窃盗の罰金刑の資金を得るため、金品窃取目的でA方に侵入。物色中に発見されたため強取を決意し、A(57歳…
結論
本件における死刑の科刑は、やむを得ないものとして是認される。
実務上の射程
精神障害やパーソナリティ障害を有する被告人の死刑判断において、障害の影響範囲(動機や実行行為そのものか、あるいは単に態様の付随的部分か)を切り分けて評価する実務上の指針を示す判例である。
事件番号: 平成2(あ)1110 / 裁判年月日: 平成8年12月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑の選択に当たっては、犯行の罪質、動機、態様、結果の重大性、遺族の被害感情、社会的影響、前科、犯行後の情状等を総合的に考慮し、その罪責が誠に重く、やむを得ない場合に認められる。自首や反省等の被告人に有利な事情を考慮しても、犯行の計画性や残虐性が著しい場合には死刑判決を是認できる。 第1 事案の概…
事件番号: 平成27(あ)120 / 裁判年月日: 平成29年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】高齢者夫婦を殺害し金品を奪取した強盗殺人等の事案において、殺害の態様が冷酷かつ悪質であり、2名の生命を奪った結果が極めて重大である場合、当初からの殺害意図の欠如や前科関係等の事情を考慮しても、死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は債務弁済のため、以前の仕事を通じて生活状況を把握して…
事件番号: 平成28(あ)1889 / 裁判年月日: 令和元年7月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】金銭目的で強盗殺人と強盗殺人未遂を繰り返した事案において、周到な準備に基づく強固な殺意、結果の重大性、被害者遺族の峻烈な処罰感情に鑑みれば、若年であったこと等の事情を考慮しても死刑の選択はやむを得ない。 第1 事案の概要:被告人は、共犯者と共謀の上、(1)強盗目的でA方に侵入し、妻Bを絞殺後に帰宅…
事件番号: 昭和63(あ)68 / 裁判年月日: 平成5年9月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】死刑制度は憲法13条、36条に違反せず、犯行の罪質、動機、態様、結果等の諸事情に照らして罪責が誠に重大である場合には、死刑の選択はやむを得ないものとして是認される。 第1 事案の概要:被告人は、離婚届を出して身を隠した妻の所在を隠匿したとして、妻の兄らに対して恨みを抱いた。被告人は恨みを晴らすとと…